セクハラにパワハラ、モラハラ。巷に様々なハラスメントがあふれているが、最近問題になっているのが「スメルハラスメント」。通称「スメハラ」――つまり、においによる嫌がらせだ。
「隣の席の男性上司の足がとにかくくさくて…。とくに梅雨時は会社に行くのが憂鬱」(35歳、女性会社員)
「先輩女性の香水がきつくて。とくに汗と混じると――。本当に、かんべんしてほしいです」(30歳、男性会社員)
などと、まるで「暴力」におびえるかのようだ。
そして今。新たに勃発したのが、巷で一大ブームを巻き起こしている、洗濯に使う柔軟剤によるスメハラだ。
「あのにおい。吐き気がしてくるのでやめてほしいです」と某メーカーに勤務する女性(33)は涙ながらに訴える。昨年いまの部署に異動になると、後ろの席の先輩女性の服から漂ってくる柔軟剤の強烈な香りに悩まされるようになった。
本人は「いいにおい」と思っているようだが、とくに夏場になると、柔軟剤と汗のにおいが混ざるのか、もはやトイレの芳香剤のにおいに近い。女性は仕事にも差し障りが出てきたので上司に「何とかしてください」と泣きついたが、「いや…。人に、『くさい』なんて、君言えないだろう」と逃げ腰。女性は内勤なので外出もままならない。仕事に集中できなくなり、気分まで悪くなってくるのだという。
本来、柔軟剤はほのかな香りのはずだった。それが2000年代半ばごろ、残香性が強い海外製の柔軟剤がブームを呼ぶと、香りはどんどん強くなっていった。いまや、香りと共にボトルも一緒に派手になり、柔軟剤入り洗剤も発売されるなど、ニッポン中に柔軟剤のにおいが充満した感すらあるのだ。
職場にあふれる柔軟剤のにおいで迷惑しているという男性(42)は、吐き捨てるように言う。
「そもそも、なぜ本人はあのにおいを『くさい』と思わないのか。洗濯しないほうがマシでしょう」
この男性の言葉は決して八つ当たりではない。スメハラが厄介なのは、自分のにおいは自分では気がつきにくいという点だ。
「嗅覚は『順応』といって、長時間かいでいるとそのにおいになじみ、気がつかないことが多いのです」
と体臭や汗の専門治療を行う「五味クリニック」(東京都新宿区)の五味常明院長は話す。
※AERA 2013年7月22日号
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http://news.goo.ne.jp/article/dot/life/dot-2013072400002.html?fr=rk