メタボとうつ。どちらも最近注目を集めている疾患だが、この二つには関連性があるという。国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)疾病研究第三部部長の精神科医、功刀(くぬぎ)浩氏は、精神疾患と栄養の関係を探る「精神栄養学」の研究をしている。また、うつ病患者と健康な成人を対象に、食生活に関するアンケート調査や血液検査も進めている。
うつ病はメタボリック症候群とも関係が深い。メタボの基準には、腹囲や血糖値、高血圧のほか、中性脂肪150 /dl以上やHDLコレステロール40 /dl未満の脂質異常が含まれる。功刀氏らの研究では、この脂質異常が、うつ病患者に多くみられる。中性脂肪150 /dl以上の割合は、健康な人では19%に対して、うつ病患者では42%にも上った。善玉コレステロールとも呼ばれるHDLコレステロール40 /dl未満の割合は、健康な人ではわずか2%だが、うつ病患者では12%とやはり高い。
また、うつ病患者は健康な人に比べて、軽度以上の肥満(BMI25以上)の割合が多いことも特徴的だ。
「状態が悪い時には食事をとれなくなる人も多いため、食べられるようになると安心して、逆に食べ過ぎになってしまう人もいます」(功刀氏)
欧米の研究では、「地中海式食事」がうつのリスクを下げるとして注目されている。野菜や果物、シーフード、豆類を中心に、オリーブオイルを使って調理した食事。それに、一杯の赤ワインだ。
これに対して、ハム・ソーセージ、ピザ、ハンバーガーといった加工食品は、うつ病発症のリスクが高いという。
功刀氏によると、うつ病患者は、ビタミンBの一種である葉酸、必須アミノ酸のメチオニンとトリプトファン、非必須アミノ酸のチロシンが不足している傾向も見られる。
「これらは、欧米の研究でもうつ病との関連が指摘されている栄養素です。葉酸以外のビタミンB類、鉄分、亜鉛、DHAやEPAなども、不足しがちであると言われています。健康な人にも、うつ病になるリスクを下げることが期待できるので、積極的に摂取してほしい」(功刀氏)
ただし、DHAとEPAについては、日本人は一般に欧米人よりも多く魚介類を食べているので、欧米のデータがそのまま日本人にあてはまるとは限らない。「日本人では肉類をもっと食べた方がよいというデータが出てくる可能性もあります」という。
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