ダイエットは一筋縄ではいかないもの。毎日の食事が健康状態や体重を大きく左右するのは間違いありませんが、やせようと食生活を正そうとした経験がある人なら誰でも知っているように、思っただけで簡単に変えられるものではありません。
もちろん、ブロッコリーの方がクッキーより健康的なのでしょう。砂糖や脂肪は健康に悪い、抗酸化物質をとるべきだといった話はいくらでもできますが、それでもクッキーがおいしいという事実は変わりませんし、食べたい気持ちが収まったりはしないでしょう。
何を食べるべきか指示するだけのダイエット計画は、長い目で見てうまくいくきません。なぜあなたが今の食生活を選んでいるか、その心理に踏み込む必要があるのです。栄養学の知識は大事ですが、それはダイエットというパズルの1ピースにすぎません。自分の行動やその根本にある動機を把握するのが、ダイエットの真の秘訣です。
まずは脳の仕組みを理解したうえで、自分の生活を健康的に変えていきましょう(そういう意味では、健康的な生活は、お皿の上ではなく、脳の中から始まると言えますね)。
「意志の力」には限界がある
最初に肝に銘じておくべきは、人間は食べるものについて、思っているほどはコントロールが効かない、という点です。「意志の力は自由自在。意志をもってすれば、ハンバーガーの替わりにサラダをオーダーするのも可能なはずだ」と思っていませんか? そして「誘惑に負けるのは、自分が弱いせいだ」とも。
でもそれは違います。自制心とは、簡単に出したり引っ込めたりできるものではありません。人間の意志決定(特に食べ物に関するもの)はもっと複雑なのです。
私たちが1日に消費するカロリーのうち、約20%ものエネルギーを脳が使っています。脳の活動にはそれほどの燃料を必要なわけで、その一環である自制や意志決定も、いつでもできるものではありません。つまり、意志の力は限りある資源なのです。筋肉と同じで、意志の力も使えば使うほどくたびれてきます。
1日を通じてあなたが下すさまざまな決断が、この資源を目減りさせていきます。そして意志の力がガス欠状態に陥ると、「ファストフードなんてもってのほか。健康的な食事を選ばなきゃ」などという気持ちは、あっという間にどこかへ行ってしまいます。
皮肉な話ですが、血糖値を上げると、意志の力は多少回復します。けれども、意志の力がすっかり目減りしてしまった状態になってから、健康的に血糖値を上げる方法を探すのは相当厳しいはずです。疲れ切った脳みそは、そのへんにあるクッキーにかじりつく方がずっと簡単だと判断してしまうでしょう。
脳の「ごほうび」と習慣
この意志の力にまつわるジレンマに対処するために、脳は意志決定のプロセスをできるだけ自動化しようとします。そして、自動化のために作り出されるのが習慣です。習慣とは、何かのきっかけに反応して引き起こされる特定の行動を指します。習慣は必ず何らかのごほうびを伴うので、きっかけへの反応は次第に敏感になっていきます。
例えば、「ポケットの中で何かが鳴っている」のをきっかけに、「ポケットに手を入れて、携帯電話をつかみ、取り出して、画面を見る」という一連の行動も、習慣のひとつです。私たち人間には新しいものを好む性質があるので、画面に表示された情報を見ると、あなたの脳内の報酬系と呼ばれる部分に、ほんのわずかですがドーパミンが分泌されます。そんなわけで、たいていの人は、新規通知が来ると反射的に携帯をチェックしてしまうのです。習慣はこのようにして生まれます。
いったん習慣が確立されると、意志の力や意識的な努力をまったく必要とせず、自動的に行動できるようになります。科学者の推計によると、毎日食べるものも、最大90%は習慣によって決められているとか。このように、脳は労力を節約して、習慣では解決できない、もっと難しい問題を判断する時に、貯めておいたエネルギーを使っているわけです。
脳の仕組みを知って、ダイエットに生かすには
これまでの話でわかるように、継続的に体重を減らしたいなら、意志の力はそれほどあてになりません。むしろ、健康的な習慣を身につけるよう努力した方が成功率は高そうですよね。
さらに、何か良い習慣を身につけたいなら、きちんとごほうびをあげないと続かないという結論も引き出せます。もうおわかりだと思いますが、ごほうびは、「遠い未来の痩せた自分の姿を思い描く」程度では不十分です。習慣の行動をとった直後に、具体的な形でもたらされなくてはなりません。つまり、長い目で見て体重をコントロールするには、心からおいしいと思える健康的な食べ物や、やっていて楽しい運動を見つけなくてはならないのです。さらに食事も運動も、手間がかからず、手近にあるものでなくては続きません。
意志の力で無理やり食事を制限しても、成功は困難だし、苦しいだけです。健康を保ちながらスリムになるためには、苦しいダイエットはやめて、楽しく続けられるヘルシーな習慣作りを目指しましょう。
まずは簡単に、朝食から始めてみませんか。アーモンドミルクをかけたミューズリーを温め、シナモンを振るだけ。これなら2分でできるうえに、とてもおいしいですよ。あるいは歩数計を買って、毎日1万歩以上歩くのにチャレンジしてみる。無理のない目標を立てて、それを達成していくのは、非常に大きなごほうびになります。多くの人がビデオゲームにはまっていることからも、それはわかりますよね。
(参考記事)Jawbone UPやFuel Bandのログを本当に健康に役立てる5つのヒント
ただし、私たちの脳は、すぐに容量オーバーになってしまいます。1度にたくさんの習慣を作ろうとするのはやめましょう。1度に作る習慣は2つ3つにしておいて、そこから積みあげていくのです。ある習慣が根づくまでの期間は、2週間から6カ月までまちまちですが、平均すれば2カ月くらいかかるようです。まずは一番簡単なものから始めて、徐々に増やしていきましょう。健康に良い習慣がしっかり身につけば、意志の力を振るう必要もなく、自然に健康になっているはずです。
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