冬は空気が乾燥します。私は毎冬、一面雪に覆われる札幌に住んでいますが、そのような状態でも、冬の空気はやはり乾燥しています。
気温が下がると、地表などからの水分の蒸発が少なくなります。さらに、雪はもともと水分なのに、溶けずに地表を覆うことから、やはり地表からの水分の蒸発が抑えられると考えられます。北海道の暖房は強力なので、室温は比較的高くなり、空気の乾燥に拍車がかかります。
そんなことが原因でしょうか、私は子どもの頃に肌の乾燥に悩まされていました。特にすねがひどく、白く粉を吹いたようになってしまいます。かゆいので、ボリボリとかいてしまいます。かきすぎると皮膚が傷ついて炎症となり、さらにかゆみが強くなる悪循環に陥りました。小食病弱だった私に、親は「栄養失調じゃないか」と心配したものです。肌の乾燥とかゆみは夏ではなく決まって冬に起こるので、栄養失調が原因ではないわけなのですがね。
通常の皮膚表面には結構な量の水分が含まれています。この水分が皮膚を形作る細胞に弾力をあたえ、ふっくらとさせます。そうすると細胞と細胞の間の隙間(すきま)がなくなり、外からの異物の侵入を防ぐことができます。この作用を皮膚のバリアー機能といいます。この大事な水分を保持するために、通常は皮膚表面を皮脂が覆っていて乾燥を防いでいます。
しかし、空気の乾燥が進行し、皮脂だけでは水分の蒸発を防ぎきれなくなり、肌の乾燥が起こるのです。乾燥すると、皮膚表面の細胞がはがれます。この細胞はすでに死んでいる、いわゆる死骸ですが、これが皮膚からはがれると、粉が吹いたようになるのです。
こうして皮膚の表面がはがれ始めると、はがれた細胞やまだはがれていないが乾燥してしまった細胞が皮膚表面の神経を刺激します。この神経は皮膚の表面に異物があるかどうかをチェックする機能があり、はがれた細胞などを異物と判定します。そこで、かゆみが起きるのです。
また、皮膚の細胞がはがれるとバリアー機能が損なわれるので、皮膚炎や感染などを起こしやすくなります。寒気を避ける、室内を加湿する、保湿クリームを使うなどして、乾燥肌を防ぎましょう。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/medical/20121203ddm013070052000c.html