遺伝的に髪の毛が薄くなるAGA(男性型脱毛症)は、男性にとって深刻な悩みだ。そんなAGAに効果のある飲み薬が普及し、気軽に治療を受ける人が増えているという。10月20日は「頭髪(とうはつ)の日」。夏に浴びた紫外線の影響が頭皮にも出やすいこの時期、気になる人は一度、医師に相談してみてはどうだろうか。(加納裕子)
◆3人に1人
AGAは思春期以降、額や頭頂部の毛髪が細く薄くなり、抜け毛が進行する。発症年齢や進行の速さは個人差があるが、確実に進行することが特徴。日本人男性の約3人に1人がAGAとされる。
主な原因は、男性ホルモン「テストステロン」に「5α-還元酵素II型」が作用し、別の男性ホルモン「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変換され、髪の成長を抑制するため。この酵素を阻害する内服薬「フィナステリド」が開発され、1998年に米国で発売された。国内でも7年後の平成17年から医師の処方薬として流通している。
日本皮膚科学会は22年4月、AGAの治療薬について5段階で評価した初の診療指針を発表。塗り薬のミノキシジル(商品名リアップ)と飲み薬のフィナステリド(商品名プロペシア)を強く勧められる「A」と評価した。
ガイドライン作成に携わった大阪大大学院皮膚・毛髪再生医学寄附講座の板見智教授は「世界中の論文を集めて検証し、この2つはかなり推奨できることが分かった」と振り返る。
実際、どのように処方されているのか。
◆性格も明るく
大阪府寝屋川市でAGA治療を行っている「吉岡皮膚科医院」の吉岡晃医師(60)によると、問診と視診を行い、円形脱毛症など他の病気ではないかをチェック。AGAと診断すると、まずフィナステリドを1カ月分処方する。服用は1日1回で、費用は1カ月分で約1万円。問題がなければ内服を続け、半数以上の人が半年から1年で効果を実感するという。
「毛髪が丈夫になり、抜け毛が減るだけでも効果は大きい。見た目が若くなることで性格も明るくなり、前向きになる人も多い」と吉岡医師。
薬を内服することで勃起不全など男性機能の低下を心配する人も多い。しかし、男性ホルモンそのものに働きかける薬ではないため、そうした副作用はないという。
吉岡医師は「以前よりも軽い気持ちで受診する人が増えてきている。治療をすべきか悩んでいる人は一度、相談してほしい」と呼び掛けている。
■開発進むAGA新薬
AGA治療のための新薬の開発は各国で進められ、AGAに悩む人の選択肢を広げることが期待されている。
現在、5α-還元酵素II型に加え、もう1つの酵素「5α-還元酵素I型」も阻害する飲み薬「デュタステリド」が臨床試験中だ。まつ毛育毛剤として使われている塗り薬「ラティース」をAGAに適用拡大するための臨床試験も行われている。
板見智教授は「臨床試験の結果を見ないと分からないが、ミノキシジルやフィナステリドと同等の効果が出る可能性はある」と話す。AGAに関係する遺伝子解析も進んでいるといい、今後、治療薬の開発に役立てられそうだ。
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