「今までと同じ生活をしているのに、太りやすくなった」とお嘆きのあなた。年を取れば代謝が落ちて、これまでと同じ生活では太ってしまうのだ。だからといって、代謝を上げようと突然ハードな運動をしたり、食生活を一気に改めたりするのは大変。日常生活のちょっとした工夫でスタイルを保つコツを、専門家に聞いた。
◇座る時「足閉じ」/飲み会でも野菜を/理想の姿を意識
まずは運動。コンディショニングトレーナーの有吉与志恵さんは「代謝を上げるには筋肉の使い方が重要。正しいバランスで歩けばずいぶん変わります」と、二つの簡単な運動を教えてくれた。
一つは「足閉じ」。椅子に座る時、膝とくるぶしを付けて座るだけだ。簡単そうに見えるが、これだけでもずいぶん、内ももの筋肉を鍛えられる。座っている間は、気付いたら意識して足を閉じるようにしよう。
「電車の中で見ていても、足を閉じて座っている人はごくまれです」と有吉さん。足を閉じて座るには、内ももの筋肉が必要だが、正しく筋肉を使えていない人が多いからだ。内ももは、ぼうこうや子宮などの臓器を支える筋肉「骨盤底筋群」と連動している。この筋肉を鍛えれば、股関節をきちんと使えて、正しい歩き方ができる。筋肉を正しく使って歩くと、筋肉の量が増えて代謝アップにつながるという。
もう一つは「足首回し」。手を使って足首を回し、ふくらはぎやすね、足の裏などの筋肉をリセットさせる。筋肉の疲れやゆがみが改善され、全部の筋肉を使えるようになる。目標は1日200回。これだけやれば効果を感じやすいというが、少ない回数でも続けることが大切だ。
ポイントは、足の指の間と手の指の間をしっかり組ませること。老廃物の排出を促すためだ。有吉さんは「お風呂の中で回すのがお勧め。内回しと外回しと両方、関節の持つ動きを引き出す気持ちで楽に回してください」とアドバイスする。
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食事も体重に直結する。女子栄養大栄養クリニックの管理栄養士、辻谷真理子さんは「食事の量が若い時のままでは太ってしまう。まず、今の自分がどれくらい食べているかを見直して」と話す。
辻谷さんが勧めるのが「野菜を多くとること」。1食につき、生で両手に乗る程度の分量(約120グラム)が理想的だという。トマトやニンジン、小松菜など色の濃い野菜や海藻類、きのこ類などが不足気味の人が多い。辻谷さんは「飲み会でも、野菜をたくさん食べれば、自然と揚げ物などを食べる量が減らせるはず」。
食べる時間も重要だ。特に夕食は内臓脂肪が増えやすいので食べる時間が遅くならないよう注意したい。「朝は胃もたれして食べられない」という人も多いが、夜遅くに食べ過ぎている可能性もある。
帰宅が遅くなった日の夕食は、消化が良く、野菜がたっぷり入ったかき玉うどんやリゾットなどを。冷凍しておいたうどんやご飯を使い、余っている野菜を煮込めば簡単だ。
さらに見直したいのはアルコールとお菓子。ビールはジョッキ1杯で約200キロカロリー。「2杯目からノンアルコール飲料や糖質オフのものに変えれば、カロリーを減らせます」。女性に多い「ケーキを食べたからお昼抜き」は、カロリーの面では問題ないが、お菓子は炭水化物と脂質が多く、代謝を助けるビタミンや、代謝アップに必要なたんぱく質が不足するため、結果として体重や体脂肪の増加につながりやすい。
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運動と食事。分かっていても、つい自分に甘くなりがちだ。そこで精神科医の奥田弘美さんに、モチベーションの保ち方を聞いた。
「女性は具体的な理想像を持ったり、人前に出る機会を増やしましょう」と奥田さん。会社の先輩や友人など、少し年上で「私もああなりたい」という理想の人を決めて意識する。月に1~2回デパートに行くなど、刺激を受ける場を意識的に作ることも大事だ。
容姿に関心が少ない男性は「きつい言い方になりますが『太ると印象が悪い』と自覚してください」。職場でも適正体重の人の方が機点が利いたり仕事ができそうな印象を与える――と意識するだけでも違ってくる。
ストレス発散に食べ物や飲酒に走る人には「食べ物に走る前の選択肢をたくさん持っておきましょう」と勧める。エステに行く、DVDを借りるなど、食べる以外で「自分にご褒美をあげる」手もある。睡眠不足になると過剰な食欲が起きやすいので「イライラして食べたくなったら寝る」と決めるのも良い。
奥田さんは44歳で2児の母。20代より1~2キロ少ない体重をキープしている。特別な運動はしていないが「車に乗らない」「階段を使う」などを意識している。
「小学校時代にぽっちゃりしていて『ぶた』と言われていたんです。それがトラウマになって、太りたくない気持ちが強いのかもしれません」と奥田さん。結局、このような意識が重要なのかもしれない。
◇加齢と共に筋肉減少
ひとくちに代謝と言っても、大きく分けて二つある。一つが「基礎代謝」。特別なことをしなくても、生命維持のために筋肉が最低限のエネルギーを使う。だが筋肉のピークは20代と言われる。加齢と共に筋肉が減り、筋肉が減ると、使われるエネルギーも減る。「年をとると代謝が落ちる」というのはこのことだ。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」によると、1日に必要なエネルギー量は、活動レベルがふつう(座位中心の仕事で、通勤、軽いスポーツなどを含む)の女性の場合、15~17歳では2250キロカロリーだが、30~49歳では2000キロカロリーに減る。その差250キロカロリーは、食事にすればおにぎり1個程度だが、積み重なるとばかにならない。
もう一つの代謝は、老廃物を外に排出すること。食べ物など悪い生活習慣が積み重なって排出がうまくいかなくなると、冷えやむくみにつながり、体が重く感じるという。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20120903ddm013100022000c.html