「原因は一体何なのか」--。利根川水系の浄水場で相次ぎ検出された水質基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)超えのホルムアルデヒド。千葉県内では19日午前から、取水停止によって断水の地域が広がり、市民生活に影響が出た。短期的な摂取では人体への影響はないとされるが、市民らは不安げな表情で給水の列に並んだ。
広い範囲で断水した千葉県野田市では約13万人に影響。市では病院などに給水車を派遣した。同市の中根配水場には問い合わせの電話が殺到。断水実施の伝達方法が防災メールや広報車の巡回などに限られた上、アクセスの急増でホームページも閲覧しにくい状態に。休日に不意を突かれた市民から「いつまで続くのか」などの問い合わせが目立つという。
中根配水場では、敷地内に仮設の給水施設を設置。車にポリ容器などを積んだ市民が2時間余りで約300組訪れた。家族3人で6個のポリタンクを持参した深井陽子さん(60)は「トイレや手洗い用に水を確保した。震災の被災地のことを考えれば、これくらいは我慢しないと」。森谷輝磨さん(35)は「断水を防災メールで知り駆けつけた。まだ子供が小さく、水が出なくなると生活全般がストップする」と話した。歯科助手の女性(34)は「水がなければ、歯も削れない。診療を断ることもあり、突然のことで大変」と困惑していた。
群馬県は19日、ホルムアルデヒドの発生原因の調査に着手。高崎市を流れる烏(からす)川にかかる共栄橋では、午前11時過ぎから、県水質検査センター職員2人が水質検査を実施した。
職員は、橋の中央部分からバケツをくくりつけたロープをおろして採水。ホルムアルデヒドを生成させるため、塩素約2.5ミリリットルを混ぜて簡易試験を行った。水が試薬に反応し、黄色なら、ホルムアルデヒドは不検出。緑に近づくにつれて濃度が高くなっていくという。この場所で採水した水の色は目視では黄色のまま。職員の一人はほっとした表情を見せ「水は生活に不可欠なもので、市民の関心も高いはず。さらに詳細な検査も行い、安全性を証明したい」と話した。
一方、行田市の行田浄水場で17日夜に水質基準値の約2倍にあたる同0.168ミリグラムを観測した埼玉県。国土交通省関東地方整備局が18日夜から上流の下久保(群馬、埼玉県)・薗原(群馬県)両ダムから放水したからか、上流6キロ地点にある取水口「利根大堰(おおぜき)」では、18日夜から4時間にわたり基準値を下回る数値にとどまった。県は上流の事業所から排出された化学物質が浄水場で使う塩素と反応し、ホルムアルデヒドが生成された可能性もあるとしている。