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子どものうそに親はどう接すればよいか

シンディ・バラさんは息子、ケイデンくん(10)が携帯ゲーム機を紛失したとき、最後にゲーム機をどこに置いたのかとケイデンくんに聞いた。答えはドレッサーの上、だった。

ドレッサーの上から下から、その周りまで数分間探した末、バラさんは偶然ゲーム機を見つけた。ベッドに埋もれていたのだ。バラさんによると、ケイデンくんは前の晩、規則を破ってベッドの中でゲームをしながら寝てしまったのだ。テネシー州クラークスビル在住のバラさんは不満に思い、「正直に本当のことを話しいれば」問題は軽かったのにとケイデンくんに話した。

 

嘘をつくことは、事実、子どもが正常に成長する上での一里塚であり、早ければ2歳から始まるものだ

子どもの目を見て、「この子はうそをついている」と気づくことがある。それはほぼすべての親が経験する緊張の瞬間だ。

うそをつくことは、事実、子どもが正常に成長する上での一里塚であり、早ければ2歳から始まるものだ。カナダ・モントリオールのマックギル大学で発達心理学 を教えるビクトリア・タルワー准教授が実施した研究によると、3歳児の3分の1以上は問題から免れるためにうそをつくという。4~7歳になるまでに、半数以上 の子どもが叱られるのを避けるためや、注意を引くため、もしくは許可をもらおうとしてうそをつく。ケイデンくんの場合は叱られるのを避けるためだったとバラさんは思っている。同じことが英国や西アフリカ、中国での研究にも表れている。

研究者は最近、子どもたちのうそに関心を強めており、認識力と道徳感の発達にどんな役割を果たしているのか調べるために実験的手法を使っている。そして、そこで得られた知見を裁判やいじめの調査といった問題に応用している。うそをつくことは子どもの予測された行動ではあるが、親は監視者になり、かつ望ましい態度を示すモデルになることで、子どものうそが落ち着いていくのか、もしくはエスカレートしていくのかに影響を及ぼす。

就学前の子どもたちに対して、おとぎ話を作ることと、害のあるうそをつくことを 区別する手助けをするのは難しい。クリスタ・ヘインさんがシリアル用の深皿が床の上あるのを見つけたとき、4歳の娘サイラちゃんはペットのパグ犬「モン キー」の仕業だと説明した。また別のときは、サイラちゃんは台所からクッキーを持ち出してきて、父親が許したとヘインさんに言った。

ヘインさ んはサイラちゃんの生き生きとした想像力が好きで、王女さまや魔法の国のお話をするのを止めさせたくはない。悪事を隠すためにうそをつくのは良くないことだ とサイラちゃんに教えるために、ヘインさんはうそをついたらどうなるかを話す。例えば友達を失くしたり、また人の気持ちを傷つけてしまうことなどだ。サイ ラちゃんが正直に規則を破ったことを認めたら、ヘインさんは許してやる。ヘインさんはニューメキシコ州アルバカーキ在住。

親は驚くべきことに、子どもたちのうそを見破ることがうまくない。就学前の子どもたちを対象にした実験的研究のなかで、親が正確に子どもたちのうそを見破ったのは、うそ全体の わずか53%だった。運任せより少し良いくらいだ。これは2010年のタルワー氏の研究によるものだが、子どもが6~8歳に成長するまでに、その数字は 33%まで落ち込む。9~11歳の子どもを持つ親は、子どものうその4回に1回しか見破ることができなかった。

母親も父親も研究者が呼ぶところの「truthfulness bias(誠実さの先入観)」を持っている。親は子どもが本当のことを話していると信じたいし、信じる必要があるのだ。

またタルワー氏は、子どもがうそをついていることを示す確かな信号である「ピノキオの鼻はない」と指摘する。ときに子どもは落ち着かない様子で視線をそらし たり、重心を片足からもう片方の足へ移したり、体の前で腕組みをすることはあるが、いつもそうするわけではない。さらに、成長するにつれてうその隠し方も上 手になる、とニューヨーク市立大学犯罪法学部ジョン・ジェイ・カレッジで心理学を教えるアンジェラ・クロスマン準教授は話す。

また最も集中力があり、社会的認知能力のある子どもが一番賢いうそをつく。もっともらしいうそをつくためには、子どもたちは他人がどう物事を解釈するのかを知る能力がな ければならない。また親の質問や詮索に直面しても、アリバイを維持できなければならない。セルフコントロールや課題に集中できる能力を含む「エグゼクティブ・ファンクション(執行職務)」技能の高い子どもは、より技巧に長けた嘘つきになるとタルサー氏は話す。

バージニア大学の研究者 が中心となって行った1996年の研究によると、大人は平均1日1回うそをつくので、紛らわしい模範になっているという。147人の参加者による他の人との 交流をつづった日記の約4話に1話が罪のないうそだった。ただ他の話もほとんどが、人よりも親切であるとか、優秀であるように見せたい、もしくは気おくれを 回避したいという企てであった。

たとえばスポーツイベントに出席するために「病気」だと偽って仕事場に電話を入れるといった、便利さのためにうそをつく親は、誠実さは大事ではないとほのめかしていることになる。でなければ、紛らわしい信号を送っていることになるかもしれない。たとえば「どんな犠牲を払ってでもA(最高点)をとりなさい」と言いながら、「でもカンニングはしてはいけない」と言うことは、カンニングをしてしまいかねないストレス を助長するのだ。

子どもたちが成長するにつれ、彼らは一般的により罪のないうそをつき、害のあるうそはつかなくなる。北京師範大学の研究者が 2010年に7、9、11歳の子ども120人を対象に行った研究では、他人の感情を傷つけないように年齢とともに利他的なうそをつくようになることがわかった。

10代になるまでに、子どもは親から離れプライバシーを確保するためにうそをつくようになるが、その結果生じる困難に対処する技能に欠けていることがよくある。うそに関する投稿が数多く寄せられるオンライン・コミュニティーサイト「カフェマム(CafeMom.com)」で、ある母親は10 代の息子が学校でいじめられていることを隠すためにうそをついたことを書いた。子どもは自分でなんとかしたかったのだ。その母親はなぜ息子が苦しんでいるのかに気づいたとき、子どもがいじめに立ち向かうことを助けるためにカウンセリングを手配した。

子育て情報サイト「ベビーセンター (BabyCenter.com)」が125人の親を対象に行った世論調査によると、半数以上の親が常習的にうそをつく子ども(たいがい2~7歳)に悩まされたという。厳しい罰はあまり効果がないと研究は示している。その代わり、仮に子どものうそが常習化したり、友情や学校生活といった通常の活動を混乱させるようになった場合には、親はプロによる助けを求めるべきだと心理学者は言う。うそをつくことは、もし子どもが攻撃的な行動や学校の無断欠席、ドラッグの乱用など他の問題も抱えている場合、精神の健康に携わるプロが呼ぶところの行動障害の1つの兆候である場合もある、と米小児科学会は指摘する。

真実に価値を置く環境を作ることは問題解決の一助となる。ケリー・ゴルスキさんの3歳の娘ルシディアちゃんは最近の夕食会で混乱した。ルシディアちゃん は、客がホストの手料理を誉めたのを見たその数分後に、同じ客がホストの料理が嫌いだと密かに言っているのを聞いたからだ。

ゴルスキさん は、客はホストの感情を傷つけないようにしていたのだと説明し、その後ルシディアちゃんに別の方法を教えた。誉めるべき別のものを見つけることで「誰かを 傷つけることなしに、本当のことを言うことができる」と。たとえば、食事の準備をしてくれたことに感謝するとか、とペンシルベニア州アレンタウン在住のゴ ルスキさんは言う。

ゴルスキさんの得た教訓は、正直な人間になるのは大事なことで、「無神経になったりや威圧的、辛辣にならずに真実を話す方法はたくさんある」ということだ。

http://jp.wsj.com/Life-Style/node_433533?reflink=Goo&gooid=nttr

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