県は、屋根の雪下ろし中の転落事故など雪の被害を防ぐため、「雪下ろしは複数人で行う」といった規定などを盛り込んだ「屋根雪条例(仮称)」を制定する。焦点だった融雪機能を装備する「克雪住宅」の義務化は、高齢者を中心に必要な機器の設置負担が重く、見送った。平成23年度は「18年豪雪」を上回る雪の被害が出たことなどから、今冬までの制定を目指す。屋根雪対策に絞った条例は全国で初めてで、条例の“神通力”で県民の意識改革を促す。
克雪住宅は、屋根に積もった雪を人工または太陽光など自然エネルギーを使って溶かす機能を備え、雪下ろしの負担をなくした住宅。県が特別豪雪地帯に指定している上越市、南魚沼市など11市町村(13万世帯)で、克雪住宅は約4割にとどまっており、同世帯を中心に義務化を検討してきた。
ただ、住宅の克雪化には設備設置費が1棟当たり約400万円かかり、高齢者世帯や低所得者世帯では義務化して罰則を設けても対応できないケースが出ることから、「実効性の確保が困難」として断念し、努力義務とした。
学識者で構成する県の「雪国の住環境改善検討委員会」が屋根雪条例制定を柱とする報告書を策定し泉田裕彦知事に提出。これを受け、県は近く県民からの意見を募るなど条例化に向けた具体的な作業に入る。
検討委の五十嵐由利子委員長(前新潟大教授)は、「克雪住宅は今後、条件が整った段階で義務化できるのではないか。努力義務でも条例化で意識は高まるはず」と話している。
一方、23年度の県内の雪による死傷者は19日現在で372人と、320人に上った18年豪雪(17年度)の被害状況を52人上回った。このうち死者は27人。全体の約7割に当たる257人が、雪下ろしなどの除雪作業中に事故に巻き込まれている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120428-00000000-san-l15