「文部科学省が学校健康診断の検査項目にスポーツ障害検査を導入する方針」と、2月の毎日新聞で報じられました。スポーツ障害とは、スポーツの練習などを過度に行うことで生じる、身体の障害のことです。特に、成長期で体ができあがっていない子供では、大人では問題ない程度の強さの練習でも、それを続けることにより骨や関節に障害が起こり、「使いすぎ症候群」とも呼ばれます。
スポーツ障害検査の目的は、子供のスポーツ障害を早期に見いだし、回復をはかることです。つまり、学校健診に入れなければならないほど、子供の間でスポーツ障害が増えているのです。健康に資するはずのスポーツが、子供の健康を害しているというのは皮肉な結果です。
子供にスポーツ障害が起こる原因が、学校の部活動や地域のスポーツクラブなどでの指導方法にあることは、もう20年近く前から指摘されています。特に、成長期における身体的特徴に対する理解不足が問題とされてきました。また、子供が痛みなどの症状を我慢してしまう傾向が、障害の悪化を助長することも分かっていました。
それにもかかわらず、スポーツ障害が増加しているというのですから、これまでの指導者講習会などの対策が功を奏していないのです。検査による早期発見、早期治療は大前提ですが、スポーツ障害や健康に対する指導者や子供の認識を高めることが必要です。
私が提案する方策は、中学、高校の保健体育の授業を改めることです。現行の学習指導要領では、保健体育は体育つまり運動に偏っていて、保健つまり健康教育の観点が弱いからです。健康教育とは単に病気・障害のことを教えるだけではなく、人の体を自分のこととして理解し、健康の重要性を認識させることです。
スポーツ指導者になる人は、高校を卒業して4~5年でその任に就き始めるケースが多いようです。知識不足を補うためにも、学校の健康教育は体育教師だけでなく、生物学の教師や養護教員が積極的に参加して展開すべきです。こうすれば、子供の意識が高まるだけでなく、指導者の認識不足は改善に向かうはずです。学校には真の健康教育が必要です。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)
http://mainichi.jp/life/health/tose/news/20120304ddm013070049000c.html