記録的な大雪に見舞われた今月中旬、長岡市山古志地域などを舞台にした短編映画「冬のアルパカ(仮題)」が撮影された。雪景色を背景に、アルパカを飼育しながら懸命に生きる女性の姿を、ユーモアを交えて描く注目作だ。撮影現場に密着してみた。【岡村昌彦】
◇牛舎でアドバイスに感嘆 記者も迫真の演技
今回の映画は、有望な新人映像作家を発掘する昨年の「第13回長岡インディーズムービーコンペティション」グランプリ受賞者の原田裕司監督(35)=東京都=に対し、長岡市が映画の製作費を一部支援。「市民映画館をつくる会」(長岡市)が撮影をバックアップしている。
映画は、アルパカを飼育する女性が借金取りに追い込まれ、金策に奔走するが……という内容。
撮影初日は、冬の間、アルパカを飼育する山古志種苧原(たねすはら)の牛舎でロケ。主演の仁後(にご)亜由美さん(27)が、アルパカのフンを捨てる場面では、仁後さんの一輪車の使い方がぎこちない。見学していた牛舎の所有者の樺沢正利さん(66)がアドバイスすると、うまく使いこなせるように。現場スタッフから感嘆の声が上がった。樺沢さんは「もうちょっと牛舎をきれいにしとけばよかったかな」と照れ笑い。
実際にアルパカを見るのは初めてという仁後さん。アルパカを飼育する役柄だけに、撮影の合間にもアルパカの飼育場の柵の中に入り、アルパカとの触れ合いに余念がない。「かわいいけれど、なつくのが難しい」と話すが、アルパカと仲良くなって、キスするまでになっていた。
一方でハプニングもあった。路面が凍った山古志で、スタッフの車が坂道を上れずに、通りがかった宅配便のトラックの運転手に手助けしてもらった。
主人公を追い込む借金取り役の伊藤公一さん(28)は山古志の大雪を見て、「想像を超えていた」と笑う。記者も伊藤さんの上司役で出演。長岡市内のパチンコ店の駐車場で、記者が伊藤さんを蹴りあげる場面。伊藤さんに「手加減せず思い切りやってください」と言われたので、申し訳ないと思いつつ、思い切り蹴った。結果、迫真の演技になった(と思う)。
クライマックスのライブハウスの場面は、長岡市内で撮影。観客役として集まったエキストラは約50人で、会場は本当のライブのような熱気にあふれた。
また、今回の撮影には、長岡造形大の学生らが照明の手伝いなどで参加。3年の高橋智史さん(21)は「映像の作り方にすごくこだわりがあり、勉強になった」と振り返った。
「市民映画館をつくる会」の菅野勝一副会長(42)はロケ現場の手配やエキストラ集めなど準備段階から関わった。「初めて映画製作に携わり、会のスタッフも一回り大きくなったと思う。この映画を全国に届けたい」と感慨深げだ。
原田監督は「地元の受け入れ態勢は、東京では考えられないほど素晴らしかった。いい雪景色も撮れた。今までにない作品ができたと思うので、楽しみにしてほしい」と語る。
映画は3月中に完成し、各地の映画祭に出品される予定。
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