シジミに多く含まれることで知られるアミノ酸の一つのオルニチンは、体内のタンパク質分解で発生する疲労物質のアンモニアを解毒し、肝機能を改善する働きがある。肝機能改善は疲労回復につながるので、夏バテが増えるこの時期には意識して摂取したい栄養成分だ。オルニチン入りの健康食品やサプリメントも販売を伸ばし、市場も拡大している。(財川典男)
◇
肝臓専門医の須田都三男さんは「オルニチンは、疲労物質のアンモニアを解毒し、無害な尿素にする。猛暑は体の温度調節に多くのエネルギーを使うため、タンパク質の分解でアンモニアが上昇する。アンモニアが少なくなるとエネルギーを効率的に作ることができるので、疲労回復につながる」と話す。
アンモニアは、それ自体が疲労物質だが、疲労回復に役立つブドウ糖の合成を阻害してしまう。アンモニアが無害化されるとブドウ糖の合成も促進されて疲労回復を後押しするというわけだ。
今でこそ、さまざまな商品に利用されている「オルニチン」だが、国内では食品原料として利用できるようになったのは平成14年からとごく最近。いち早く16年にサプリメント「リメイク オルニチン」として商品化した協和発酵バイオ(東京都千代田区)。同社学術研究企画室の西村明仁さんは、「シジミに多く含まれているアミノ酸という訴求が受け入れられたようだ」と話す。
同社は「オルニチン」を原料として健康食品メーカーなどに供給もしている。国内売上高は21年度までは横ばいだったが22年度は前年比5倍と急増した。市場調査会社の富士経済(東京都中央区)の調べでも、22年のオルニチン関連商品の市場規模は前年比7・7倍の85億円。今年もさらに増加し、前年比24・1%増の105億5000万円と予測している。
協和発酵バイオは、20年にキリンビールグループになった。キリンはグループを横断した形で健康・機能性食品事業の強化を開始。第1弾としてオルニチン入りの商品群を昨年4月に発売した。ノンアルコールビール「キリン 休む日のAlc.0・00%」「キリン 大人のキリンレモン」「小岩井 大人の元気ヨーグルト」など多彩だ。発売4カ月で年間販売目標をクリアするなど好調で、協和発酵バイオも原料生産を5割増やした。
オルニチンの効果に着目した「キリン 休む日のAlc.0・00%」の商品開発を担当したキリンビール商品開発研究所主務の北林健さんはこう話す。
「ノンアルコールビールの競争は激化しているが、オルニチン入りで休肝日用に特化したのはこれだけ。昨年は販売目標を中間期で2倍に上方修正し、年間ではその目標も上回った。今年は震災による停滞もあったが、現在は震災前並みに戻った」と話す。
機能性だけでなく、ビールのコクや飲み応えを再現したのがビール党に受けた。
「最近、オルニチンはメンタルストレス軽減や肌のコラーゲン合成を促進するという研究も発表された」(須田さん)と新たな可能性もでてきたオルニチンを利用した食品群はますます増えそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110923-00000112-san-soci