鬱病(うつびょう)の症状を客観的に診断するための指標となりうる物質を、広島大大学院(広島市)などの共同研究グループが世界で初めて発見したと30日発表した。成果は米科学誌、プロスワン電子版に掲載された。鬱病はこれまで、医師が患者の症状をもとに主観的に診断する方法が主流だが、今回の発見では、血液を調べることで客観的な診断方法の開発に役立つと期待される。
発見した研究グループの山脇成人(やまわきしげと)教授によると、鬱病の要因は世界で研究されているが、糖尿病診断での血糖値や高血圧診断での血圧値のような客観的な指標は発見されておらず、気持ちの落ち込みや意欲の低下などの症状から、医師が判断するしかなかったという。
山脇教授らは脳内に多く存在するタンパク質である「脳由来神経栄養因子(BDNF)」をつくる遺伝子に着目。未治療の鬱病患者20人と、鬱病でない18人の血液を採取して解析したところ、この遺伝子の中で起きる「メチル化」と呼ばれる化学反応をみると、鬱病患者にだけ特有のパターンが見つかった。過度のストレスが異常なメチル化を引き起こした可能性があるとみられる。
BDNFは神経細胞の成長に不可欠な栄養素の物質で、これまでも動物実験などで鬱病と深い関係があることを示す研究データはあったが、BDNFの血液中の濃度に関する研究では関連が証明されていなかった。今回の手法が実用化できれば、費用は1万5千円程度で、2日間で結果が出るという。
山脇教授らは「さらにデータを集め、抗鬱薬の投与や病状の変化と、メチル化の程度の変化の関連性などを調べて、鬱病の客観的な診断方法を確立したい」としている。
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