【東日本大震災 今何ができる】
東日本大震災の影響で、乾パンなどの非常食を買い求めたり、備蓄していた非常食の賞味期限切れに気づいたりした人も多いだろう。しかし、非常食を口にしたことがない子供や、缶入りの乾パンの中になぜ氷砂糖が入っているのかを知らない大人も少なくないようだ。乾パンは保存性に優れているだけでなく、堅くて「子供の歯固めや、あごにも良い」(メーカー)。備蓄も大切だが、一度ふたを開けて食べてみるのも“備え”の一環となりそうだ。(豊田真由美)
◆鉄のような堅さ
三立製菓(浜松市中区)の「カンパン」は震災後、「3月いっぱいまで品薄状態」(同社)となり、同社は震災の翌週から生産量を通常の30~50%増やす増産態勢に入った。“鉄のような堅さ”で知られる「くろがね堅(かた)パン」の製造元、スピナ(北九州市八幡東区)には、震災後の2、3日間で通常の1カ月分の注文があったという。
「カンパン」はかつて軍用食糧などとして納められ、「くろがね堅パン」は大正末期、八幡製鉄所の労働者に「高カロリーで長持ちする栄養補助食品」(スピナ)として食べられていた。戦後、一般の消費者向けにも販売されるようになり、現在では乾パンは「非常食」のイメージが強い。普段からおやつとして楽しむ消費者もいる。一方で、備蓄をしている家庭であっても、一度も食べたことのない子供や、缶入りの乾パンに氷砂糖が入っている理由を知らない大人も珍しくない。
◆氷砂糖で食べやすく
こうした状況を踏まえ、普段から防災教育や食育に乾パンを取り入れている保育園や小学校がある。
千葉市花見川区のちどり保育園では2月、3歳以上の園児の食育の一環に乾パンを取り入れた。同園によると、園児の前で乾パンの缶を開けてみせ、氷砂糖が入っている理由や、どんなときに食べるかを説明。園児たちは「堅い」「ゴマの味がする」などと言いながら味わっていたという。
京都府京田辺市の市立田辺小学校では、平成19年から毎年1月に1回、給食に乾パンを取り入れている。同校によると、乾パンは賞味期限が近く買い替えの時期を迎えた備蓄用を、市内の避難所から譲ってもらうなどして調達。児童たちは「おいしい」「ビスケットみたい」などと言ってほおばっているという。同校は「非常食に慣れてもらおうと始めた」と説明する。
氷砂糖について、三立製菓は「災害時には水がないことも想定されるため、唾液の分泌を促し、乾パンを食べやすくするために入れている」と解説。「糖分も補給でき、精神的に落ち着く」としている。
賞味期限が間近で消費したいときなどは、ジャムやはちみつをつけたり、ドリンクやスープに浸して軟らかくしたりすると食べやすい。三立製菓のホームページ(http://www.sanritsuseika.co.jp/)では乾パンを使ったレシピも紹介している。
備蓄用の買い替え時には、家庭で乾パンをじっくり味わってみてはどうだろう。
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■ロングライフ食品「買いたい」8割
保存料不使用で長期間の保存が可能な「ロングライフ食品」について、8割超の主婦が「買ってみたい」と考えていることが、森永乳業(東京都港区)の調査で分かった。調査は3月3、4日と5月17、18日の2回、全国の20~49歳の既婚女性400人を対象に実施した。
それによると、ロングライフ食品について、13・5%が「ぜひ買ってみたい」、70・3%が「機会があれば買ってみたい」と回答。「東日本大震災後、食品の購入時に重視していること」は、牛乳▽飲料・ジュース▽ヨーグルト▽ゼリー・プリン▽チーズ-の5品目で、「味」「低価格」に次いで3番目に「賞味期限が長い」が多かった。
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