[ カテゴリー:医療 ]

薬事法改正、ドラッグ・ラグ解消へ望むこと-卵巣がん体験者の会スマイリー・片木代表

【第155回】片木美穂さん(卵巣がん体験者の会スマイリー代表)

薬事法改正に向けた議論がスタートした。厚生労働省は今年3月、厚生科学審議会に医薬品等制度改正検討部会を設置した。同部会では、医薬品の安全強化策、承認迅速化策をどのように薬事法に盛り込むかを議論し、来年の通常国会への薬事法改正案の提出を目指す。
同部会の委員を務める片木美穂さんは、「卵巣がん体験者の会スマイリー」の代表として、ドラッグ・ラグ問題に取り組んできた。「海外ではさまざまな部位に使用されている抗がん剤が、日本では使えない」。そんな事態を解消するには、何が必要なのか。患者会代表として薬事法に望むこととは-。(島村友太)

-医薬品等制度改正検討部会の委員に選出された経緯について教えてください。
この部会では「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の最終提言をベースに、医薬品の安全対策や、承認の迅速化をテーマに薬事法をどう改正すべきか議論すると聞き、これまで5年間、ドラッグ・ラグ問題に取り組んできた患者団体の代表としてお役に立てればと、委員を引き受けました。

-ドラッグ・ラグ問題については、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が昨年2月から開かれ、適応外薬については、医学・薬学上その効果が公知であると判断され、「公知申請」が認められれば、迅速に保険適用される枠組みができました。こうした動きをどのように見ていますか。
注意すべきなのは、この会議で扱われるのが、あくまで「海外とラグがある医薬品」だということです。逆に言うと、議論に取り上げられるには、ラグが生じていなければならない。「製薬企業は、ラグを生じさせることで会議に取り上げてもらうという、楽な道を選ぶのでは」という、うがった見方をする人もいます。
一方、製薬企業に話を聞いたところ、公知申請が認められ、承認前に保険が効くということは、薬を売るという意味ではありがたいことのようですが、承認されるまで医療従事者に商品の情報提供はできないそうです。ですから、公知申請のスキームで承認前に保険適用されたとしても、医師には保険適用されたという情報は広く伝わらず、 実際に使用するのはその薬の情報を熟知している医師に限られてしまうということですね。

-ドラッグ・ラグ解消に向け、薬事法ではどのような改正が必要とお考えでしょうか。
現在、欧米と日本のドラッグ・ラグは約4年といわれています。このラグは承認審査が1年、治験が1年、残り2年は製薬企業が「日本で開発するかどうか考える時間」とのことです。ですから、「考える時間」がなくなれば、2年も短縮できる。製薬企業が日本での開発をためらう要因を改善できる部分が、もし薬事法の中にあるなら、それに取り込むのがミッションと考えています。
もっとも、製薬企業に「日本で開発を進められない壁は何か」と聞いても、明快な答えは返ってきません。「日本は試験プログラムや、求められる試験の内容が国際水準と違う」「国際共同治験でやりたいのに、日本はいろいろな条件を付けるから、手間がかかる」「医薬品医療機器総合機構(PMDA)のさじ加減で決まってしまう」など、意見はさまざまですが、いずれも薬事法の範疇では解決できない問題です。
ラグを解消する上では、医薬品の承認、保険適用、医療現場での使用実態などをトータルで考える必要があるので、それぞれのステークホルダーがまとまって、「ドラッグ・ラグ問題検討委員会」を立ち上げた方が本当はいいだろうとも思います。

-ドラッグ・ラグ問題以外に、薬事法改正で取り組むべきテーマはありますか。
これだけインターネットが普及している中では、医薬品に関する情報の氾濫と個人輸入の問題があると思います。
まず情報の氾濫ですが、患者は病気と向き合うことに必死で、あらゆる情報の中で何が正しいのかを自己判断しろと言われても、すごく難しい。どうしても甘い言葉に惑わされてしまう現状があり、ブログに載っていることをそのまま信じてしまう人だっています。高額な医療費に悩む患者が、インターネット上で安く売られている抗がん剤を見つけたら、購入してしまうかもしれません。でも、それが偽造医薬品だったらどうするのか。患者の安全が脅かされるだけでなく、メーカーへの経済的ダメージ、信頼低下にもつながりかねません。
個人輸入については、偽造医薬品の問題などから禁止すべきとの意見もあります。でもそうすると、難病患者の人など、海外で承認されている医薬品をやむを得ず輸入している人が困りますから、完全には禁止できないと思います。ですが、既に日本で承認されている薬は個人輸入させないというくらいの、強い規制は必要ではないでしょうか。
医療機関の中に個人輸入をしているところもあり、それがきちんとしたエビデンスに基づいているのかというのも、検証が必要だと思うのですが、厚労省の方からは、「それは薬事法の問題というよりは医師法の問題」と言われました。どこの国でも卵巣がんに使われていないような薬を、個人輸入の医療機関が患者に使用してしまって、敗血症を起こしてしまった例もある。そういうものも薬事法で規制できないのだろうかと考えています。

-情報の氾濫で患者が惑わされることがあるとのお話ですが、厚労省やPMDAの医薬品情報提供体制に課題はありますか。
厚労省やPMDAのホームページには医薬品の情報は載っていますが、患者がそれを知っているかというと、疑問符が付きます。また、製薬企業から配布する冊子をもらったことがあるかどうかをスマイリーの会員に聞いてみたところ、「もらったことがない」と答えた人が半数以上でした。
薬局では少なからず、「くすりのしおり」のような形で医薬品の情報を貰えるのに、病院で抗がん剤を打っても、何の薬か分からないことがある。副作用による不利益があるなら、知りたい患者にはきちんと情報提供する。これを医師任せでなく、きちんとしたツールとして実行すべきと思います。ここは薬事法で定められるのではないでしょうか。
医薬品の問題は、これまであったさまざまな問題が複雑に絡まって放置された状態なのだと思います。ですから、医薬品等制度改正検討部会で現状を改善するとしても、もっと頻繁に会合を開いたりしないと、大幅な改善は見込めないでしょう。限られた回数で成果を出すのなら、ポイントを絞らなければならず、少なくとも「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」が昨年4月にまとめた最終提言の内容について、まずは実現すべきだろうと思います。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110606-00000001-cbn-soci

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