--女性を日本酒に取り込めば、大きな市場になりますね
嘉納 女性に日本酒を飲んでほしいと思うのは、日本酒に合う味付けというものを知ってもらいたいからなんです。
--といいますと
嘉納 居酒屋と家庭で飲む場合を比べると、たいてい居酒屋でのほうが多く飲みます。これは奥さまがお酒を飲まない人だと、お酒に合う料理の味付けがわからないからです。だから女性にお酒を飲んでほしいなぁ…と。そうすれば、ご主人が家庭でお酒を飲むようになって消費量が増えることになります。
--それはまたずいぶんな深謀遠慮ですね(笑)
嘉納 ちょっと遠回りですがね。出汁(だし)から油へと食文化が変化したことはわかりましたが、じゃ、何か打つ手があるのかとなると、これがなかなか難しい。決定打がないので、あれこれと手を考えていく必要があります。そのひとつが女性を日本酒に引き込むこと。じわじわと家庭の味をお酒に合うようにしてもらえたらありがたいなぁと思います。もっとも、ほどほどに飲んでいただきたいと思いますが(笑)。
--ところで、昨今の健康志向は日本酒に追い風になりますか
嘉納 1977(昭和52)年に有名な「マクガバンレポート」というのが出ました。米国のマクガバン上院議員が出した米国の食生活と慢性疾患の関係についてのリポートで、簡単にいいますと、動物性食品を主体とした食事で慢性疾患が増加しており、このままでは治療のための巨額の医療費で米国が破産してしまうと警告しました。いまの日本が同じ状況ですね。
--ショッキングな内容で話題になりました
嘉納 そのリポートで、最も理想的な食事は(江戸期の)元禄時代以前の日本人の食事だと指摘したんですが、このリポートを機に「日本食=健康食」というイメージが欧米に一気に広がって、米国で日本食ブームが起きました。
--しかし、日本酒が健康にいいとは、よく指摘されますが
嘉納 日本酒は昔から「百薬の長」といわれているくらいで、血行をよくし、ストレスを解消するとか、健康面でプラスの効果があります。もちろん適量の場合ですよ(笑)。ほろ酔い加減でやめるのが一番いいんです。ほろ酔いはどんなアルコール飲料でもあるんですが、日本酒が一番はっきりと自覚できるんです。適量が分かりやすい。特にお燗(かん)にすると、なおいいんですよ。
--お燗にすると吸収が速いですからね
嘉納 そうですね。すぐにほろ酔いになる。そして、それがわかります。この点、冷酒は口当たりがいいので、ついつい飲んでしまいますが、酔いがまわってくるまでに時間がかかりますから、そろそろほろ酔いかな、と思ったときにはすでに飲み過ぎています。適量を求めるのなら、やはりお燗です。(聞き手 佐久間史信)
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