知的障害者による、プロの和太鼓集団「瑞宝太鼓」のメンバーを追うドキュメンタリー映画「幸せの太鼓を響かせて~INCLUSION~」が梅田ガーデンシネマで公開中だ。知的障害者を見つめてきた小栗謙一監督と、元内閣総理大臣夫人で製作総指揮の細川佳代子さんによる第4弾。小栗監督は「彼らが自立して生きる姿を通して、今後の社会を考えるきっかけになれば」と話した。
知的障害者とともに社会を作る-。「インクルージョン(社会的内包)」をテーマに作品を作ろうと、小栗監督が海外への取材を企画していたとき。細川さんから、長崎で具現化されていると聞いた。
そこで現地へ。社会福祉法人の南高愛隣会、通称・コロニー雲仙で、周囲の人の協力、支援のもとで自立している人々の姿を見た。「かつて日本にあった隣近所で支え合う生活。それが雲仙にはある。映画で表現したいと思った」
中でも和太鼓のプロとして生計を立てる集団に惹(ひ)かれた。昭和62年に訓練施設のクラブ活動として発足、平成13年にはプロ集団に。現在では年間130公演をこなす。昨年の「第9回東京国際和太鼓コンテスト」では、全国のプロ、アマの奏者を抑えて2位に入った。
いまは実力者。そこで世界的な和太鼓奏者、時勝矢(じしょうや)一路さんに難易度の高い曲を書き下ろしてもらい「難しい新曲に挑む姿から、ここに達するまでの10年以上の道程を描き出した」。
彼らは最初は口唱歌で、そして体で楽曲を覚えていく。撮影は延べ7カ月。「彼らは撮影の3カ月前から練習していましたが、到達できなくてもいいと思っていた。でも見事な演奏をみせてくれました」
同時に、彼らの生活をじっくりと描いている。団長の岩本友広さんは6年前に結婚。4歳の息子を育てている。岩本さんは「家族との撮影は最初は緊張した。でも、いまは多くの人に見てもらいたい」。団員の川崎拓也さんは「団長のように、子供が持てたらという目標ができた」と話した。
監督は「今、大切なのは物ではなく、家族や命と改めて感じた人も多いはず。何を大切にしっかり生きていくか、を感じてほしい」。
5日午前10時から、「バリアフリー上映会」として聴覚障害者向けの日本語字幕版を上映する。(橋本奈実)
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