【東日本大震災 今何ができる】
■出荷自粛、出荷制限、摂取制限… 国はルール徹底の努力を
出荷自粛、出荷制限(出荷停止)、摂取制限…。これらは、福島第1原子力発電所の事故の影響で、野菜や魚介類から基準値を超える放射性物質(放射能)が検出されたときに出される国や自治体の指示だ。しかし、どう違うのか。食の安全を守るための取り組みだが、仕組みが分かりにくく、対応をめぐって混乱も起きている。(平沢裕子)
◆「お願い」のレベル
今月22日、出荷制限がかかっていた千葉県多古町のホウレンソウが消費者に販売されていたことが明らかになった。「出荷制限がかかっている」と聞いて、「放射性物質に汚染された危ない野菜」と思った人もいるかもしれない。
「出荷自粛」は自治体が検査に基づき、基準値を超える放射性物質が検出された食品の出荷自粛を要請する。「出荷制限」(出荷停止)は国の判断で、こうした食品について原子力災害対策特別措置法に基づき都道府県に指示を出す、より強い措置だ。
「摂取制限」は出荷制限よりさらに厳しい措置で、地域全体に汚染の影響が広がっているかを総合的に国が判断し、都道府県に指示を出す。
今回誤って出荷されたホウレンソウは、3月25日の検査で基準を超える放射性ヨウ素が検出されたことで県から出荷自粛の指示を受けた。その後、4月4日に出荷制限の指示が出された。
出荷制限の指示は国から県に出され、県が市町村あてに生産者団体などへ通知を出すよう依頼する。ところが、この生産者は多古町の隣の芝山町在住で、多古町に所有する畑でホウレンソウを栽培していた。芝山町に出荷制限がかかったわけではないので連絡が届いておらず、県の調査に生産者は「出荷自粛は知っていたが、出荷制限は知らなかった」という。
出荷自粛は「出荷を控えてもらう」という法的根拠のない「お願い」のレベルで、出荷制限は法的根拠に基づいた指示だが、いずれも罰則はない。罰則が科せられるのは、基準を超える食品を販売・流通させたとき。食品衛生法違反で、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となる。
しかし、今回のホウレンソウを出荷前に検査したところ、検出された放射性ヨウ素は1キログラム当たり70ベクレル、放射性セシウムは同28ベクレル。基準値はヨウ素が同2千ベクレル、セシウムが同500ベクレルで、これを大幅に下回っており、食品衛生法違反には当たらない。食べても全く問題がないにもかかわらず、出荷できなかったことになる。
◆生産者に説明を
出荷制限がかかった野菜は1週間ごとに検査し、3回連続で基準を下回らないと制限が解除されない。生産者からは「基準を下回っているのに出荷できないのはおかしい」と不満の声も上がる。だが、26日にはやはり千葉県で、出荷制限とされたホウレンソウが出荷されていたことが判明。一部の農家は出荷制限を知っていたという。
全国消費者団体連絡会の阿南久(あなん・ひさ)事務局長は「生産者の気持ちも分かるが、ルールを守らないと消費者は混乱する。政府は生産者に、なぜ出荷してはいけないのかを分かりやすく説明し、ルールを徹底させてほしい。また、トラブルがあったことで不安に思っている人も多い。生産者側はしっかりルールを守り、汚染された食品は市場に出ない仕組みであることを消費者に伝える努力も必要だ」と話している。
■節電・エコのアイデア 「家庭の知恵」募集
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