ヘッドホンの大音量で起きる「騒音性難聴」 初期はキーンと耳鳴り…予防するには?
イヤホンやヘッドホンを使い、大音量で音楽を聞き続けるなどし、徐々に聴力が低下するのが「騒音性難聴」です。新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークの機会が増えています。イヤホンなどの使い方には注意が必要です。(村上和史)
予防が大切な「騒音性難聴」…長時間の大音量避ける
有毛細胞の傷で
鼓膜の奥の内耳にはカタツムリのように管を巻いた「 蝸牛かぎゅう 」という器官があり、管の中はリンパ液で満たされています。音が伝わってリンパ液が振動すると、「感覚毛」を持つ有毛細胞が動いて電気信号に変換し、聴神経を通じて脳に伝わります。
大音響や騒音によって有毛細胞が傷つくと、脳にうまく音を伝えられなくなります。初期症状で多いのが、耳がふさがっているような「耳閉感」と、「キーン」「ツーン」といった耳鳴りです。
イヤホンやヘッドホンを使った時だけでなく、コンサート会場で大音量で音楽を楽しむことなどは騒音性難聴の要因となります。爆竹や花火などの爆発音を近くで聞く、工場の機械音や工事現場で発生する大きな音にさらされ続けるといった場合も発症することがあります。
予防が大切な「騒音性難聴」…長時間の大音量避ける
症状は両方の耳に出るとは限りません。例えば、コンサート会場のスピーカーのそばで音楽を聞くと、スピーカーに近い方の耳だけ発症することがあります。ただ、もう片方の耳が聞こえ方を補うため、多くの場合、違和感に気づきません。
放置して大きな音を聞き続けると、高音域の音から聞こえなくなります。症状に気づかないまま進行すると、低い音も聞こえにくくなり、人との会話にも支障が出るようになります。
騒音消去、耳栓でも
予防が大切な「騒音性難聴」…長時間の大音量避ける
画像の拡大
大きな音を聞いた後、一時的に耳を休めることが大切ですが、早期に診断し、治療をするのが原則です。大きな音にさらされた翌日も症状が続いていれば、耳鼻科を受診しましょう。
治療には、炎症を抑えるステロイド剤や、血流の循環を良くする循環改善剤、ビタミン剤が使われます。耳閉感や耳鳴りは、傷ついた有毛細胞での血流障害が原因とされているためです。受診時に、小さな話し声を聞き取れなかった場合は、静かな環境で1週間入院することもあります。
傷ついた有毛細胞は再生しないため、予防していくことが大切です。工事現場など、騒がしい環境で長時間過ごす人は耳栓を使ってください。音楽を聞く際は、周囲の騒音を消す「ノイズキャンセリング」機能付きのイヤホンなどを選びましょう。
世界保健機関(WHO)などは2019年、スマートフォンで大音量の音楽を聞くことなどが影響し、世界の若者の2人に1人が難聴になるリスクがあると発表しました。大人の場合、走行中の電車内の騒音レベルに当たる80デシベルの音を聞く機会を、1週間に40時間以内に抑えることなどを求めています。
騒音性難聴に詳しい関西医科大特命教授の鈴鹿有子さんは、「地下鉄やバスに乗って、イヤホンやヘッドホンで音楽などを聞いていると、つい音量を上げてしまいます。騒音性難聴は騒音がなくなれば進行しません。耳を守るために小さな音で聞く習慣を身につけましょう」と話しています。
https://bit.ly/3qHQbbZ