文部科学省は、高校における特別支援教育の充実方策を検討するため有識者らによる協力者会議を発足させた。一般の小中学校で実施されている「通級指導」を高校にも導入することが主な検討課題だ。この点について、ベネッセ教育情報サイトでは、教育ジャーナリストの斎藤剛史氏に伺った。
特別支援教育のための校内組織の設置や支援コーディネーターの任命は、小中学校のほとんどが実施しているのに対して、高校は約8割程度となっています。高校では、特別支援教育の体制は形式的には整いつつあるものの、実際には特別支援教育が機能していないところが多いというわけです。一方、文科省の推計によると、発達障害のある生徒は高校生全体のうち2.9%(全日制1.8%、定時制14.1%、通信制15.7%)いるとされています。
高校で特別支援教育が広がらない理由の一つは、義務教育と異なり全員が入試を受けて入学しているという高校教育の性格、それに伴う教員の意識の問題などが指摘されます。さらに問題として、小中学校の通級指導のような「特別の教育課程」を編成する制度が高校にはないことが挙げられます。しかし、障害の有無にかかわらず教育をするというインクルーシブ教育の広がりや、障害者差別解消法が2016(平成28)年度から施行され、公立学校には障害者への合理的配慮の提供が義務付けられることなどから、高校でも特別支援教育への対応が急務です。
このため文科省は協力者会議を設置して、障害のある子どもが一般学級に在籍しながら、必要に応じて別教室などで特別な支援を受ける「通級指導」を高校でも導入するため、「特別の教育課程」の編成を制度化する検討を始めることにしました。既に文科省は、高校における通級指導のモデル校を2014(同26)年度から指定しており、その取り組み内容などを参考にしながら具体的な方法を論議する予定です。
ただ高校の場合、一時的にクラスから離れて特別な支援を受けることに対して、年齢的に抵抗感が強いこと、他の保護者の理解を得ることが難しいことなど、高校独特の課題もあり、「小中学校と同じ取り組みはできない」と指摘する高校関係者もいます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151217-00010002-benesseks-life