【AFP=時事】アマチュア天文愛好家らが火星上空の高高度で発見した奇妙な雲状のプルーム(煙流)により、火星大気の組成に関する謎が深まっているとの研究論文が、16日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。
この現象は2012年3月12日、火星上の「明暗境界線」上空で観測された。明暗境界線とは、星表面の光が当たっている部分と当たっていない部分の境目。
スペイン・バスク大学(University of the Basque Country)のアグスティン・サンチェス・ラベガ(Agustin Sanchez-Lavega)氏率いる研究チームが発表した論文によると、1つ目のプルームは、約10時間かけて形成され、その約11日後に消えた。その間、プルームの形状は次第に変化し、「2つの丸みを帯びた突起物」から複数の柱状になり、最終的には合体して1本の「指」の形になったという。
2つ目のプルームが出現したのは2012年4月6日。ほぼ同じ場所でみつかり、約10日後に消えたとされる。
これら2つのプルームは、南北および東西の方向に500キロ~1000キロの範囲で広がっていた。
論文によれば、これらのプルームは火星南部の起伏の多い高地の一部、キンメリア大陸(Terra Cimmeria)上空、高度約200~250キロに達する高高度に出現したという。
火星では現在、水と火山活動の痕跡を探すための詳細な探査が行われている。理論上、この2つの要素をめぐっては、何らかの形の生命を育んだ可能性があるとされている。
これまでにも、塵(ちり)や氷の結晶でできた雲は火星上空でたびたび発見されている。だが、それらの雲はすべて100キロより低高度で形成されたもので、今回のように広範囲に及ぶ雲が発見されたのは初めてだ。
論文は、プルームが水や二酸化炭素(CO2)の微粒子でできている可能性があるとしながら、一方で、太陽からふきつける粒子が地球磁場に衝突して地球大気中で発光する「オーロラ」に似た現象が起きている可能性にも触れている。
キンメリア大陸には、局地的で強力な磁場を持つ「帯状地」が存在することが、火星周回科学探査機による過去の観測で示唆されている。もしこれが正しければ、火星の「オーロラ」は、地球のオーロラの1000倍と驚くほど明るくなると思われる。
だが「どちらの説明も、火星上層大気に関する現在の理解に反している」ことを、研究チームは認めているという。
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