はじめに
遥か昔から、人間は神の姿を星の中に見出したり、星の動きによって自らの運命を占ったりと、星を特別な存在として捉えていました。現代でも、朝のニュース番組や雑誌などで星占いを目にするとついついチェックしてしまう人も多いかと思います。
中でも「流れ星」には、見た直後に願い事をすると叶うというロマンティックな言い伝えがあり、ペルセウス座流星群やオリオン座流星群などの毎年見られる流星群の時期になると、全国で多くの人がその姿を見るために夜空を見上げます。
今回ご紹介するアイソン彗星は、それらの彗星とは違う種類の彗星で、今回の太陽接近が最初で最後になる彗星です。つまり、今回見逃すと二度と目にすることができない貴重な彗星なのです。
そんな歴史に残る彗星ともいえるアイソン彗星を存分に楽しむ方法をご紹介していきたいと思います。
彗星ってなに?
地球が属している太陽系には、恒星である太陽に対して、惑星・準惑星・小惑星・彗星などが存在します。
彗星は、大きさが数キロメートルから数十キロメートルの規模の小さな天体です。太陽系最大の天体である木星の半径が約7万キロメートルということを考えると、その小ささがお分かりいただけるかと思います。
成分の8割は氷で、残りは二酸化炭素・一酸化炭素・ガス・塵などで形成されています。
太陽に近づくにつれて彗星が暖められると、本体の氷が蒸発し、ガスや塵を一緒に吹き出します。これにより、彗星が柔らかい光に包まれて輝きます。これを「コマ」と呼びます。
流れ星が流れる時に光の尾を引いているように見えるのは、吹き出したガスと塵によるもので、ガスが作る青い尾は「イオンの尾」と言い、塵が作る尾は「ダストの尾」と言います。
彗星は大きく分けて二種類あり、オリオン座流星群の母天体であるハレー彗星のように公転周期が200年以内のものは「短周期彗星」、200年以上のものを「長周期彗星」と呼ばれます。
冒頭でアイソン彗星の太陽接近は最初で最後と書きましたが、これはアイソン彗星の公転周期が1567万年以上というとてつもなく長い時間だといわれているからです。
アイソン彗星について
アイソン彗星はベラルーシのヴィタリー・ネフスキー氏とロシアのアルチョム・ノヴィチョノク氏によって2012年9月21日に発見された彗星です。
アイソン彗星という名前は、発見者が所属する国際化学光学ネットワーク(International Scientific Optical Network)の頭文字から取られたものです。
アイソン彗星が注目される理由は、その特徴にあります。
アイソン彗星は「サングレイザー」と呼ばれる太陽のすぐそばまで接近する彗星であり、このことによって「コマ」や「イオンの尾」、「ダストの尾」が通常よりも大きく出ると予想されているため、とても明るくて目に見えやすい彗星になるといわれています。
また、このタイプの彗星は太陽に近づきすぎて本体が溶けきり、崩壊してしまう可能性もありますが、アイソン彗星の場合は、本体の直径が約3キロメートルという少し大型の彗星なので、太陽の近くを通過した後も尾を引いたきれいな彗星のまま残ると予想されています。
さらに、太陽の近くを通過した後は尾を真横から見ることができる軌道で太陽から離れていくため、彗星を観測する条件としてとても良いともいわれています。
観測時のアドバイス
アイソン彗星は11/24前後に太陽の近くを通過し、明るさも最高潮に達しますが、見える位置も太陽に近くなるため、観測に適した日にちは、通過後の12/7~8あたりがおすすめです。時間帯は夜明け前で、方角は東の空です。このタイミングですと、上手くいけば肉眼でも観測することができるかもしれません。
日付が進み、12月下旬になると日没後の北西の空にも確認ができますが、前述の通り、彗星はその本体を溶かしながら輝いているため、時間が経てば経つほどその輝きが薄れていきます。ですから、この頃になると双眼鏡が必要となるでしょう。
注意点
アイソン彗星は2013/11/24前後に太陽に最も近づきます。このタイミングで双眼鏡や望遠鏡を使って観測しようとすると、誤って太陽を見てしまう恐れがありますので、この時期に観測する際はくれぐれも注意しましょう。
また、ここまでご紹介してきた内容はあくまでも予想ですので、実際のところはアイソン彗星が太陽に近づくまでどうなるか分かりません。太陽に近づいた段階で崩壊してしまう可能性もあります。
時期が近づいてきたら、軌道などの最新情報を調べ、アイソン彗星がどうなっていくかワクワクドキドキすることも楽しみの1つにするようにしましょう。そうすれば、もし崩壊してしまってもアイソン彗星を観測したことがいい思い出になると思います。
おわりに
いかがでしたでしょうか。地球で見られるのは最初で最後だと思うと、そんな時に遭遇できる幸せと宇宙の不思議を感じることができますよね。
アイソン彗星の観測をさらに特別なものにしてくれるツアーなどもあるようですので、気になった方はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
ひとまず著者は、2013/10/21のオリオン座流星群に、アイソン彗星がきれいなまま残ることをお願いしたいと思います。
(image by PresenPic)