かつては「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」と教えられた太陽系の惑星たちですが、いつからか「水・金・地・火・木・土・天・海」となりました。
このように太陽系の惑星から「冥」の文字が消えたのは、決して冥王星そのものが消滅してしまったり、太陽系からいなくなったりしたわけではなく、2006年に冥王星の位置づけが変わり、新たに設置された「準惑星」へと変更になったためです。
冥王星が「準惑星」となった経緯については以前ご紹介しましたが、今回もそんな冥王星に再びスポットを当ててみたいと思います。
■冥王星はどんな星?
冥王星は、海王星の外側を回っている準惑星で、太陽からは平均でおよそ60億km(=太陽~地球間のおよそ40倍)も離れています。
大きさは月よりも小さく地球の1/5ほどで、軌道も地球の軌道面から大きく傾いた楕円軌道をとっています。軌道が傾いているため、時期によっては海王星よりも太陽に近づくことがあります。(最近では1979年から1999年までがこの時期にあたりました)
衛星もいくつか持っていますが、そのうち最大の「カロン」は冥王星の大きさの半分以上もあります。
ちなみに、「冥王星」という名前は、ローマ神話に登場する冥府の神「プルート」に由来しています。「冥府」とはいわゆる「死後の世界」のことで、太陽からはるか遠くの暗闇の中に存在するというイメージから命名されました。
■冥王星はうっかり見つかった?
冥王星を地球から見たときの明るさは14等級以下と暗いため、肉眼で見つけることはできません。
このように地球から見ると目立たない天体であったため、発見されたのは20世紀に入ってからのことでした。しかもそれは偶然の産物によるものなのです。
冥王星が発見されるもととなったのは、それまでに発見されていた天王星と海王星の存在でした。
1781年にドイツ人の天文学者「ハーシェル」によって発見された天王星ですが、天文学者たちが観測を続ける中で、この天体の公転軌道が何らかの力によって少しずつ変化していくことに気が付きました。
そして、これをきっかけにした計算によって導き出されたのが1846年に発見された海王星でした。海王星の重力が、天王星の軌道を少しずつ変化させていたというわけです。
けれども、海王星の影響だけでは天王星の軌道の変化を完全に説明することができなかったため、さらなる天体の捜索が続けられることになりました。
そのような中、1916年にアメリカの天文学者パーシバル・ローウェルが、計算によって新たな惑星の存在を予想し、それを1930年に同じくアメリカ人のクライド・トンボーが発見しました。
トンボーは天体写真を1枚ずつ地道に見比べていくことで、その違いからこの暗い冥王星を見つけたとされています。
ところが、実は計算で求められた新惑星の軌道と、発見された冥王星の軌道とはまったく違うものでした。結局、新惑星が存在する根拠とされた軌道の変化は、天王星や海王星の質量の見積もり誤差が原因だったと後で分かっています。
つまり、冥王星はうっかり偶然見つかってしまった天体だというわけです。
■アメリカ人と冥王星
冥王星は、2006年に準惑星に降格になるまで、太陽系惑星としては唯一アメリカ人が発見した天体であったことから、この星に対するアメリカ国民の思い入れも相当なものでした。そのことは、ミッキーマウスの愛犬「プルート」が、冥王星が発見されたのと同じ1930年に誕生したためにこの名前が付けられていることからも伺えます。
こういった背景もあるため、冥王星が惑星から除外されると決まった時のアメリカ国内での衝撃は大きく、「仕事でミスを犯してプルートされた」といったように、「plutoed=降格させられる」という動詞的な意味が新たに作られ、これが米国方言協会の年間大賞を取ったほどです。
■まとめ
2006年の惑星の定義見直しにより、太陽系の惑星から除外されてしまった冥王星。
けれども、今も準惑星として、太陽の周りを回り続けています。
アメリカの天文学者が偶然見つけた天体とはいえ、これに対するアメリカ人の思い入れは相当なものだったようですね。
http://news.goo.ne.jp/article/mynaviwomen/life/education/mynaviwomen-363516.html