福島第1原発事故以降の脱原発機運の高まりに乗じ、石炭採掘権の購入や太陽光事業への投資を誘う詐欺が相次いでいる。経済産業省や国民生活センターは業者名を公表するなどし、「時流に乗ったセールスは詐欺の常とう手段」と注意を呼びかけている。
和歌山県紀の川市の70代の女性宅に3月、「合同会社北海炭鉱」のパンフレットが届いた。
「これからのエネルギーを担う黒いダイヤ」「世界で石炭の開発が求められています」などの記述とともに、世界の石炭消費量などのグラフも掲載。北海道釧路市の廃鉱の再生をうたい、1口10万円、年利4.8%とする「採掘権譲渡権」の申込書や別会社の社員らしき人物の名刺も入っていた。
数日後、名刺の人物を名乗る電話があり、「高く買い取るので購入してほしい」などと勧誘された。女性は不審に思いすぐに電話を切ったが、「何でうちの番号が分かったか不思議」と話す。
国民生活センターによると、「北海炭鉱」に関する相談はこれまで全国で23件、被害総額140万円。経産省北海道経済産業局によると、同社は鉱業法に基づく採掘権の登録がなく、石炭採掘権は架空。社名を公表して注意喚起しているが、相談や問い合わせがなくならないという。
太陽光発電に関する詐欺も相次いでいる。和歌山県警によると、太陽光発電を行う企業の社債購入を電話などで持ちかけられ、今月、同県日高川町の60代男性が5200万円、和歌山市の60代女性が1000万円を振り込む被害があった。
また、同センターによると、愛媛県の70代の無職女性から昨年12月、太陽光発電への投資を勧誘され150万円の被害にあったと相談があった。「グリーン電力証書」に関する業者のパンフレットが届き、別の業者から「証書を購入してくれれば謝礼を払う」と電話で勧誘されたという。「グリーン電力証書」に関する相談は昨年10月ごろから寄せられ、今年2月末時点で164件に達した。
石炭、太陽光発電とも、資料送付とは別名の会社が間に入って投資のメリットを強調し、買い取りなどを約束するのが特徴。同センターは「複数の業者による電話でパニック状態となり、だまされやすい。しかし、エネルギー事業の展開は簡単にはできない。『買い取る』などの誘い文句に気をつけてほしい」としている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120428-00000044-mai-soci