各地の児童施設にランドセルや文房具、現金などのプレゼントが届けられている。
昨年末から相次ぐ善意の寄付に、心温まる思いをした人も多かろう。
贈り主の多くは、約40年前にヒットしたプロレス漫画「タイガーマスク」の主人公・伊達直人を名乗っている。
発端はクリスマスの朝、前橋市にある児童相談所に、伊達直人名で新品のランドセル10個が届けられたことだった。 それをニュースで知り、共感を覚えた人たちによって全国に広がったようだ。
添えられた手紙には「タイガーマスク運動の志に共感した」「全国にタイガーマスクが居るんですよ」などと書かれている。
子どもたちの幸せを願って、自らが育った孤児の家にファイトマネーを寄付し続けたタイガーマスクの物語が、各地に伊達直人氏を出現させたのだろう。
ボクシング漫画「あしたのジョー」の主人公・矢吹丈を名乗る贈り主も現れた。 願わくば一時のブームに終わることなく、長く続いてもらいたい社会現象だ。
ランドセルなどの寄付が、保護者のいない児童や、親から虐待を受けた子どもらが入所する「児童養護施設」の存在にスポットを当てた点も見逃せない。
報道を受け、細川厚生労働相は11日の記者会見で「児童施設に対する施策を充実させていく。国民の皆さんにも、施設の子どもたちに温かい手を差し伸べ、関心を持っていただきたい」と語った。
高木文部科学相も「児童施設の存在に今一度目を向け、互いに支え合う、励まし合う社会になるよう取り組む」と述べた。
全国に約580か所ある児童養護施設では、約3万人の子どもたちが生活している。ここ10年間で児童数は1割以上増えた。 近年は親の虐待を理由とした入所児童が増えているという。
その一方で、手狭な施設や十分とは言えない児童の生活費・教育費、低賃金で働く職員の労働条件など様々な問題を抱えている。
国、行政には、一人一人の児童が安心して自立の道を歩み出せる環境整備を進めてもらいたい。
プロ野球巨人軍の内海哲也投手は毎年、シーズンの奪三振数と同じ数のランドセルを児童養護施設にプレゼントしている。 「子どもたちから元気をもらう。 笑顔を見ていると、もっと頑張らないと、と気合が入ります」と言う。
各地のタイガーマスクも、思いは同じなのではないか。
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