綿栽培、復活へ夢つむぐ 彦根、休耕田で始動 文化体験や商品も
戦後廃れた滋賀県彦根の綿栽培を休耕田で復活、綿関連商品の製造販売を通じて農村観光や障害者の就労機会を生み出す取り組みが、彦根市南部で始まった。ビジネス的な手法で社会問題の解決を目指す「コミュニティービジネス」の実践で、地域活動リーダーを養成する「おうみ未来塾」のメンバーを中心に、住民や県立大生らが永続できる地場産業づくりを進めている。
休耕田での綿栽培や農家で農村文化を体験する「農泊」を手がける澤とし江さん(59)=同市本庄町=が、おうみ未来塾の仲間に呼びかけて「おうみこっとん夢つむぎ」を結成、先月から活動を本格化させた。綿栽培の復活に取り組む県立大生のグループ、近江の機織り文化を研究する琵琶湖博物館学芸員らが協力する。
初年度は5月に国産の伯州(はくしゅう)綿とアメリカ綿の2種を休耕田1500平方メートルに植え付けた。10月ごろ50キロ前後の綿繊維の収穫を見込んでいる。来年1~4月、同市の農泊施設に昔ながらの農具を備えて、収穫した綿花の種と繊維を分離する「綿繰り」、藍などで色づけする「染め」、機織機による「織り」などかつて農村で行われていた生活文化を体験する。
綿糸の一部は製品用に整え、県内の障害者施設「たんぽぽ作業所」(彦根市)や「あかね寮」(東近江市)などが「さをり織り」に加工、綿の風合いを生かしたマフラーやふきんにする。規格を統一して商標登録し地域ブランド化も目指す。
滋賀県の綿栽培は戦前、水田のあぜ道などで盛んに行われていたが、戦後は海外からの輸入綿花や化学繊維が増加し、現在はほとんど消失した状態だという。
「夢つむぎ」の澤代表は「観光やものづくりなどの事業を通じて人とお金を呼び込みながら、失われつつある湖国らしい農村の情景や文化を守りたい。もうけ主義でない地域のための活動として続けたい」と話している。