大学内に社会福祉法人が運営する食堂が増加中 群馬
群馬県内の大学で、社会福祉法人が運営する食堂が増えている。障害者が調理や接客に主体的に参加し、貴重な就労訓練の場となる一方、夏休みなどの長期休暇による不安定な営業形態から業者に敬遠されがちな学食への参入には、大学側も歓迎。全国的にも非常に珍しいといい、福祉・大学関係者の注目を集めている。
毎日のメニュー管理、原価計算の補助-。脳性マヒの障害を持つ渋川市居住の生方良樹さん(21)は、群馬大荒牧キャンパス(前橋市)のレストラン「あらまき」で店長ばりに仕事をこなす。平成18年11月の開店以来勤務を続ける“ベテラン”で、後輩たちからの信頼も絶大だ。
当初は「はい」の返事さえできなかったという人見知りな性格だったが、3年間の“客商売”を通じて「いつも冗談を言って周りを笑わせるムードメーカー」(補助職員スタッフ)に成長。「将来はパソコンを使う仕事に就きたい」と、一般企業就職という夢に向け瞳を輝かせる。
生方さんが所属する社会福祉法人「あい」(前橋市)が運営に参入するまでに、同店は15年6月、18年3月と立て続けに業者が撤退。学食は夏、冬の長期休暇など、時期によって客数が大きく変動し、不安定な経営を余儀なくされることが原因の一つだった。
だが、社会福祉法人の場合には国からの補助があり、影響を受けにくい。同大人事労務課では「福祉団体に活動の場を与えることができる上、安定した経営が見込める」と話している。
勤務スタッフからは「働くのが楽しい」と好評の学食だが、評価のシビアな学生を満足させるにはサービスの向上も不可欠。
県立女子大(玉村町)で学食「ぴいすきっちん」を運営する社会福祉法人「すてっぷ」は、校内に専用焼き釜を設置し、焼きたてのパンを学食併設の購買で販売する。市販の生地を使わず粉から練り上げ、約4~5時間かけて作るパンは女子大生から好評で、ほぼ毎日売り切れる盛況ぶり。食堂でも一食200~400円という低価格設定で、国産野菜をふんだんに使用したメニューを用意し「一般の飲食店をライバルに考えている」(「すてっぷ」新井亘総務課長)と自信をのぞかせる。「すてっぷ」では今年4月、県立県民健康科学大(前橋市)でも学食運営をスタートさせた。
東京福祉大の上田征三教授(障害者教育論)は「各大学で障害者の受け入れが広がるなか、今後追随する動きが出てくるのではないか」と分析している。