あっぷるLINK:社会・地域 下北で障害者の自立支援 /青森
◇保護者と企業の理解が鍵--浸透にはなお時間
むつ市内に7月、障害者の就労を進めるための職業訓練などに取り組む「就労移行支援事業所『勇気』下北」が開設された。障害者の自立支援をする「障害者自立支援法」(06年10月施行)に基づく下北地域初の施設。運営には、障害者の保護者と企業の双方による理解が必要だが、浸透にはまだまだ時間がかかりそうだ。【松沢康】
事業所は、青森市のNPO法人「夢の里」(鎌田慶弘理事長)が運営。18歳以上の知的、精神的障害や言語障害などがある人で、比較的軽度で自立可能な人が対象。就労を希望する人に、最長2年間の職業訓練などをする。費用の1割は自己負担(障害の程度によって減免する場合あり)。訓練内容は、基礎体力をつけるランニングやマナー、接客の指導、計算問題など日常生活に必要な知識の講義や清掃、実際の職場実習など多彩で、イベント参加による地域交流も予定している。
所長の新田靖二さん(30)は「青森市などの都市部と違い、下北は世間体を気にする保護者が多く、子供を表に出したがらない。大企業は少なく、職業訓練の場としてお願いに回っても、『うちは無理』と断られる」と厳しい現実を話す。
一方、障害者の中には「社会から離れて後ろめたい気持ちで育ってきた。むしろ下北以外の地域で働きたい」との声もある。新田さんは、粘り強く一つの形にしたいと考えている。
新田さんの父敬二さん(63)はNPO法人の副理事長で、自営の自動車板金業で障害者1人を雇ったこともある。昨年、青森市内に「就労移行支援事業所『勇気』」が開設されたが、新田さん自身が福祉事業に携わるとは思わなかった。
新田さんは札幌市の北海道自動車短大を卒業後、自動車販売会社の整備士となり、転勤でむつ市に来た。昨年4月、妻の優子さん(37)と結婚。別な地域への異動話があった時、むつ市で事業所を開設する話が敬二さんからあった。結婚3カ月後の昨年7月、思い切って優子さんに相談。新田さんは「『えっ、本当に』と驚かれたが、最終的には『やってみたら』と押してくれた」と話す。
7月13日に事業所を開設し、むつ公共職業安定所などを通じて訓練生を募集しているが、訓練を受けているのは市内の男性1人だけ。問い合わせは数件あり、関心を寄せる保護者も増えているが、「郡部からだと往復2000円のバス代がかかり、あきらめる人もいる」という。下北地域の交通事情の悪さがネックになっている。
「正直、事業はまだ軌道に乗っておらず、弱音を吐いて妻から励まされることもある。いろんな人の理解を得るようにし、まず訓練生を集めたい」と意欲を燃やしている。
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問い合わせは「夢の里」下北事務局(むつ市小川町2の3の33、0175・34・0123)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080901-00000090-mailo-l02