<知的障害児施設>「二重の差別」焦点に…自治体で大きな差
障害者自立支援法で障害児施設に導入された「契約」制度は、障害の有無で子どもに対する公的支援が区別されるうえ、保護者負担が必要な契約か、公費負担の措置かの判断に都道府県で大きな差が出るという二重の差別を生んだ。子どもが自治体の「さじ加減」で翻弄(ほんろう)される不公平さは、今月から本格的に始まる自立支援法の見直し論議で焦点の一つになりそうだ。
独自の基準を定める千葉県の障害福祉課は「独自基準で国が定める措置の3要件を補足する。児童相談所(児相)が家庭調査し、少しでも虐待などの恐れがあれば措置と判断している」と説明する。
独自基準は自立支援法施行直前の06年7月に制定。児相の所長が(1)児童虐待防止法の児童虐待に該当(2)保護者が死亡、行方不明で養育不能(3)保護者が精神疾患等で入院・在宅療養中(4)保護者が服役または施設入所中(5)保護者と暮らすことが児童の心身に悪影響--のいずれかと判断すれば措置対象とする。国より要件を細かく規定することで、児相の恣意(しい)的な判断を排除する狙いがある。
県内の施設の男性職員は「千葉は措置か契約かを決める前に、児童福祉司が必ず子どもや家族の状況を調査している。仮に契約になっても、年に1回は子どもに会いに来てくれる」と評価。一方、契約率の高い東京都の児相については「十分に調査もせず、『原則契約』ばかり。子どもに会いに来る福祉司もまれだ」と指摘する。
日本知的障害者福祉協会の調査には、契約と判断された235の事例が寄せられた。「親が養育を放棄」「父親は知的障害、母親は精神障害者」など、家庭環境が切迫したものばかりだ。しかし、児相の回答は大半が「国の措置要件に該当しない」「親が『契約する』と言った」。中には、養父の暴力を理由に措置を求めた施設の意見を「体罰はしつけ。虐待ではない」とはねつけたケースまであった。都内で施設を運営する施設長の一人は「障害があるだけで虐待さえ虐待だと認めてくれない。障害児には社会的な養護が不要ということか」と厳しく批判する。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080411-00000014-mai-soci