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マダニとツツガムシが媒介する6種類の感染症 死亡例も【あなたを狙う「有毒」動物】

マダニとツツガムシが媒介する6種類の感染症 死亡例も【あなたを狙う「有毒」動物】 

【あなたを狙う「有毒」動物】

日本国内でマダニが媒介する感染症は、「ライム病」「野兎病(やとびょう)」「日本紅斑熱」「重症熱性血小板症候群」(通称SFTS)「ロシア春秋脳炎」の5種類。また、ツツガムシが「ツツガムシ病」を媒介します。ツツガムシは分類上マダニとは異なりますが、病気をうつされる側にとっては大した違いでありません。この6種類の病気について、少し詳しく見ていきましょう。

まず「ライム病」です。この病気はボレリアというスピロヘータの一種によって引き起こされます。欧米では毎年10万人以上の患者が出ると言われています。4類感染症(全数報告義務)に指定されているため、国内の患者数は正確に把握されています。1999年から2018年の20年間で231人が感染しました。年間平均で11・5人ですから、かなり珍しい病気です。

最初はインフルエンザに似た症状や、遊走性紅斑という特徴的な皮膚症状が現れます。進行すると全身に直径1cmほどのブツブツが出たり、顔面神経麻痺など末梢神経の異常が出たりします。さらに悪化すると慢性関節炎なども発症します。 近年、別種のボレリアが原因の回帰熱が少し注目されています。海外で感染して帰国した例が見つかっていますが、北海道や極東ロシアのマダニが回帰熱ボレリアを持っていることも確認されています。今後の動向が気になるところです。

しかしライム病も回帰熱も、テトラサイクリン系の抗生物質がよく効くことが分かっています。また、ボレリアを持っているマダニは少数派であることも分かっているので、過度に心配する必要はなさそうです。

■野ウサギが減り幻の病気になった「野兎病」

「野兎病」は野兎病菌という細菌の感染によって起こる病気です。感染した野ウサギをつかまえて、素手で皮をはいだり解体したりすると感染しますし、この細菌を持っているダニからも感染します。インフルエンザのような症状のほか、リンパ節が腫れたり痛んだり、皮膚がただれたりといった症状が長期間(年単位)続きます。戦前から戦後にかけて、全国で毎年数十人が感染していました。しかし、ストレプトマイシンがよく効きますし、野ウサギが減ったこともあって、いまではほとんど幻の病気になっています。

■死ぬこともある「日本紅斑熱」「ツツガムシ病」

「日本紅斑熱」と「ツツガムシ病」は、リケッチアと呼ばれる細菌よりは小さくウイルスよりも大きい病原体が引き起こす病気です。リケッチアの種類は違うのですが、症状はほとんど一緒で、発熱、発疹、倦怠感、頭痛などが主な症状です。テトラサイクリン系の抗生物質がよく効くため、早めに治療すれば、さほど怖い病気ではありません。ただし治療が遅れると死亡することもあります。

「日本紅斑熱」については、2007~2019年の13年間で2726例(平均約210人/年)、死亡は44例(3・4人/年)が報告されています。ツツガムシ病は毎年400人前後発生しています。死亡数は日本紅斑熱よりも少なく、平均すると毎年2人前後です。

「重症熱性血小板症候群」(通称SFTS)は新興の感染症で、2006年に中国で初めて確認されました。発熱と嘔吐や下痢を伴い、白血球と血小板が減り、重症例では神経障害を起こし、血液凝固異常(DIC)から多臓器不全に陥って、死に至ることがあります。中国での致死率は8~16%とされています。2009年にはアメリカで同様の症状の患者が2人見つかり(2人とも回復)、中国のSFTSウイルスに近いウイルスが同定されています。インド、アフリカ、ヨーロッパでも類似した患者とウイルスが見つかっています。

■国内致死率22%超「重症熱性血小板症候群」

日本では2012年秋に、山口県在住の成人女性が発病して死亡し、血液からSFTSウイルスが分離されました。厚生労働省が全国の医療機関に情報提供を依頼したところ、新たに7人がSFTSであることが判明し、しかも最も古いものは2005年であったことが判明しました。患者には海外渡航歴がないことなどから、遅くとも2005年までに日本に侵入していたことが示唆されています。また先の山口県の女性を含む患者8名中、5名が死亡したことも分かりました。2017年前半までに患者数は250症例に達しており、うち56人が亡くなっています(致死率22・4%)。

マダニ(フタトゲチマダニ、タカサゴキラレアマダニなど)から人に感染しますが、体液を介したヒト―ヒト感染もあります。また全国からウイルス保有マダニが見つかっています(保有率5~15%)。有効な治療法はなく、対症療法が中心になります。

最後に「ロシア春秋脳炎」です。これはダニ媒介性脳炎という名で一括りにされる病気の極東バージョンです。日本脳炎ウイルスに近いウイルスによるもので、ヨーロッパからシベリア、中国、韓国などに広く分布しています。頭痛や発熱などの初期症状から始まって、重症化すると精神錯乱や昏睡などの症状が出るといいます。致死率は20%以上とされています。2018年までに北海道で5人が発病し、2人が亡くなりました。
(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)

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