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新型コロナが「ただの風邪」ではない理由 コロナ病棟医師の見解

 新型コロナが「ただの風邪」ではない理由 コロナ病棟医師の見解

新型コロナワクチンの接種がすすんでいます。当初接種スピードが遅いのでは・・・と懸念していましたが、どこの自治体も頑張っておられ、子どもや職域の接種まで開始されることになりました。

第4波も落ち着きつつあるためか、「新型コロナはただの風邪」「基礎疾患がない人は軽症で済むのだから騒ぎすぎ」という意見を再びよく耳にするようになりました。

若年者や基礎疾患がない患者さんの大部分が軽症で終わることは間違いありません。その人たちにとっては、結果的に「新型コロナはただの風邪だった」と言えます。

同様の感染性を持つインフルエンザでは、国をあげてこれほど議論されることはありません。そのため、「騒ぎすぎ」という意見が出てくることも、よく理解できます。

しかし、新型コロナはただの風邪ではありません。改めて、以下にその理由を述べます。

理由1:重症化率が違う
医療従事者として実感される差は、「重症度」です。肺炎を起こす頻度が高いのです。私は長らく市中病院で呼吸器内科医をやっていますが、インフルエンザ肺炎で入院する人は、年に数えるくらいしかいません。コロナ病棟を有しているとはいえ、1施設で1年間に400例以上のウイルス性肺炎を診るというのは、異常事態です。

「周りに感染している人なんて誰もいない」という意見もあります。2021年6月12日時点での累積感染者数は約77万人なので、確かにインフルエンザほどは身近に新型コロナ感染者を目にしないはずです。しかし、もしインフルエンザと変わらないくらいの重症度なら、入院が必要な人はもっと少なくなるはずです。

「新型コロナだから入院閾値を下げている」というのは正しくなく、パンデミック初期は確かにそのような対応をしていましたが、最近は必要なケースのみにしぼって入院を引き受けています。

そのため、肺炎を起こした新型コロナ患者さんが、これだけたくさん入院しているというのは、ウイルスそのものの毒性が強いからに他なりません。

入院を要した新型コロナ患者さん8万9,530人と、季節性インフルエンザ患者さん4万5,819人を比較したフランスの研究では、死亡率はそれぞれ16.9%、5.8%という結果でした(1)。同様に、入院を要した新型コロナ患者さん3,641人と、季節性インフルエンザ患者さん1万2,676人を比較したアメリカの研究では、死亡率はそれぞれ18.6%、5.3%でした。
入院を要した患者さんだけをみているのでいずれも死亡率が高いですが、インフルエンザよりも新型コロナのほうが重症化しやすいことが分かります。なお、現時点で日本において妥当な研究は報告されていませんが、インフルエンザと新型コロナの重症化に明確な人種差はありません(2021年6月13日午後23時追記)。

季節性インフルエンザと新型コロナの違い(文献2より引用)
市中病院の医療従事者は、普段から入院が必要な患者さんばかりを診ているので、現場でインフルエンザとの違いを感じることができます。

しかし、それ以外はやはり軽症ですから、一般の人には「ただの風邪」としてうつってしまいます。たしかに「大部分は軽症」というのは決して間違いではないのですが、重症化リスクや死亡リスクが高いということがこれまでのウイルスとは違うところです。

理由2:集中治療用ベッドが逼迫する
「理由1:重症化率が違う」によって次に起こることは何でしょうか。そう、ケアを要する入院患者さんの数が増えるのです。入院しなくてもよい患者さんは、自宅やホテルで療養していただきますが、酸素飽和度が下がって酸素療法が必要になったり、食事が摂れなくなったりすると、入院が必要になります。

「日本にはたくさんベッドがあるんだから、それを新型コロナ用に転用すればよい」という意見もありますが、感染対策を講じながら診ていける急性期病床を無限に生み出せるほど、日本の診療体制は充足していません。

もし「頑張って感染対策をしなくてもよい」とすると、ケタ違いの感染者を生み出すことになります。上述したようにインフルエンザよりも重症化率が高いため、これにより重症者の絶対数が増加します。

ここで、病床逼迫に陥った大阪府の第4波を見てみましょう。大阪府には、600床あまりの集中治療用ベッドがありますが、新型コロナに使えるのは多くても224床というのが当初の試算でした。待機手術などを遅らせて捻出しても、せいぜい350床くらいではないかと思います(その他は救急患者や手術患者に使用されるため)。

この状態で、2021年5月4日に449人の重症患者さんが発生していました。重症病床に転院できない人がたくさん発生し、図の黄色の部分は軽症・中等症病床で診療せざるを得なかった重症患者さんをあらわしています。集中治療用ベッドの8割を一疾患が占めるというのは、通常の医療現場では考えられないことなのです。

大阪府の重症患者数(筆者作成)
通常使用している集中治療用ベッドのほとんどをあっという間に埋めてしまう感染症は、どう考えても「ただの風邪」ではありません。

■参考記事:新型コロナの「重症化」とは? 人工呼吸器を装着したら、実際どうなるのか?(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210504-00235518/

「稀な現象も起こってしまえば1分の1」
「どれだけ低い確率でも、副反応が起こってしまえば、その人にとっては1分の1になる」ことから、新型コロナワクチンに対して不安に思われる気持ちはよく分かります。

しかし、「新型コロナのほとんどが軽症で済む」という事実の裏に、「どれだけ低い確率でも、重症化してしまえばその人にとっては1分の1」という致死的な新型コロナ患者さんも存在します。

自分より年下の新型コロナの患者さんに人工呼吸器を装着しなければならなかったとき、これは他人事ではないなと痛感しました。

保険に加入している人が多いと思いますが、保険というのは、「事象が発生する確率は低いが、万が一発生してしまうと損失が大きいもの」に対してかけるという鉄則があります。ワクチンにもこういう保険的側面があって、「たぶん感染しても私は大丈夫だろうけど、万が一にそなえて打つ」という感覚を私は持っています。

そして、個人の加入する保険とは異なり、これが集団免疫という大きな盾になり、社会や国の利益につながります。

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