スーパーやコンビニエンスストアなどの店頭で「無添加」と表示された商品をよく見かけるが、いったい何を添加していないのだろう。表示上のルールはあるのだろうか。「無添加」表示の中には、消費者の誤解を招きかねない紛らわしい例もあるようだ。原材料表示などを見て、勘違いしないようにしたい。
◇おにぎり、みそ、ジュースなど加工食品
■輸入原材料
食品製造販売の石井食品(千葉県船橋市)は、杏仁(あんにん)豆腐のパッケージに「無添加調理 製造過程においては食品添加物を使用しておりません」と表示していた。製造加工の過程で、添加物を使用していなかったが、台湾から輸入した原材料に香料が添加されていたことが今年5月の社内点検で分かり、出荷を停止、回収を行い、消費者庁に報告した。
消費者庁は7月、同社に対して、日本農林規格(JAS)法に基づき、表示の是正と再発防止を指示。「原材料に添加されていた香料が製品の中で効力を発揮している。無添加という表示は不適正表示にあたる」との判断だった。
「無添加表示で販売を再開したい」という同社は、香料が入っていない原料が確保できないため、今も販売を再開していない。
■pH調整剤
コンビニで販売されているおにぎりの一部に「保存料・合成の着色料は使用しておりません」の表示がある。添加物の表示欄を見ると、「pH調整剤」「グリシン」などとある。これらは食品衛生法では、保存料として扱われていないが、保存料として使用することができる。消費者庁食品表示課は「表示自体は違反ではないが、保存目的で使用しているなら、保存目的の添加物だという表示があった方が分かりやすい」と話す。
コンビニ側は「食品衛生法に基づいて表示しているので、問題はない」(大手)というが、西島基弘・実践女子大教授(食品衛生学)は「保存目的の添加物が使われているのに、『保存料を使っていない』という表示は、消費者に誤解を与える」と指摘する。
■業界ルール
みそには大きな文字で「無添加」と書かれた商品が目立つが、食品衛生法でいう添加物とは関係がない。
無添加こうじみそを製造販売するハナマルキ(長野県辰野町)によると、無添加は「アルコール(酒精)とだしのもとを添加していない」という意味だという。
これは、みそ業界の公正競争規約で取り決められた自主ルールに基づいている。
■「勘違い防止」
一部の野菜ジュースは「保存料は使用しておりません」などと表示している。しかし、一般的に野菜ジュースは加熱処理されているため、もともと保存料を使用する必要がない。
ある大手食品メーカーは「保存料なし」と表示する理由について、「ジュースが常温保存できるのは、保存料を使っているためではと消費者が勘違いするのを防ぐため」と説明する。
食品添加物の表示に詳しい消費生活コンサルタントの森田満樹さんは「勘違いを防ぐためだという理由が通るなら、どんな表示でも許されてしまう。その製品だけが、優れているかのような誤解を与えかねない」と指摘する。
■化学調味料
「化学調味料 無添加」と表示された食品も少なくない。化学調味料とは、サトウキビなどを原料に微生物の発酵で作り出したうまみ成分のグルタミン酸やイノシン酸などで「うまみ調味料」のことだ。
ただ、昆布エキスやトマトエキスなどといった調味料の中にも「うまみ調味料」と同じ成分が含まれている。
食品添加物を輸入、製造、使用する企業などで作る日本食品添加物協会は「無添加といっても、結果的に、原料由来のうまみ調味料が使われたことになる」と説明する。
「食の安全裏側の話」(カザン)の著者、渡辺宏さんは「化学調味料無添加の食品からも、化学調味料の成分であるグルタミン酸は見つかる。化学調味料無添加との表示は、意味がない」と話している。
◇「使用5%減で経済損失189億円」--近畿大など試算
「保存料の使用が5%減った場合、年間約189億円分の経済損失が発生する」。こんなユニークな推計を、有路(ありじ)昌彦・近畿大准教授とアミタ持続可能経済研究所(東京)がまとめ、今年3月に開かれた日本農芸化学会の10年度大会で発表した。
保存料は食品の腐敗を抑えて、食中毒を減らす効果がある。使用しないと生産・流通過程で温度管理が必要になって新たなコストが発生したり、店の棚に置く期間が短くなって売り上げが落ちたりする。ちくわやソーセージなど水産ねり製品でそうした損失を計算したところ、保存料の使用量が5%減るだけで、約189億円になるという計算だ。
大南絢一・同研究所研究員は「保存料は化石エネルギーの節約や食品廃棄の削減にも役立つ」と安全性以外の面でも効果があることを指摘する。
◇保存料の役割解説した冊子発行
保存料の役割を知ってもらおうと、食品添加物メーカーの上野製薬(大阪市)は、マンガとイラストで説明する冊子「みんなでおいしく食べたい!」(14ページ)を作製、希望者に無料配布している。申し込みは、上野製薬企画課(06・6203・0774、ファクス06・6203・0773)へ。
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