◇薬と併用、注意…持病ある人は医師に相談
健康食品の中でも、国が有効性や安全性を認めた特定保健用食品(トクホ)の人気は高い。現在約900品目もあり、消費者にすっかり定着した。しかし、表示の意味を正しく理解せず、過剰な効果を期待してはいないだろうか。
<体に脂肪がつきにくい>と表示されている日清オイリオの食用油「ヘルシーリセッタ」。分子の鎖が短い中鎖脂肪酸を含むため、通常の油より肝臓での分解が速く、脂肪として体内に蓄積しにくいのが特色だ。しかし、摂取するだけで、すでにある体脂肪が減ったりするわけではない。同社広報・IR部は「あくまで通常の油に比べて、体内で脂肪になりにくいという意味」と説明する。
トクホ製品の中でも代表的なヒット商品となったサントリーの「黒烏龍茶」には<脂肪の吸収を抑える>とある。この意味は「脂肪の多い食事と一緒に飲むと、食後の中性脂肪の上昇を抑えるということ」で、「空腹時でも中性脂肪が下がるというわけではない」(同社広報部)という。
<血糖値が気になる方に>と表示されている大正製薬の「グルコケア」はどうか。でんぷんの一種、難消化性デキストリンを配合し、小腸での糖の吸収を穏やかにするが、販売する大正製薬広報室は「食事の時に飲めば糖類の吸収が抑えられ、食事30分後の血糖値が下がるという意味」と説明する。血糖値の高い人が毎日飲んで血糖値が下がるものではないという。
適切な利用法を知らないと、思わぬ健康被害に遭う恐れもある。
トクホなどの健康食品と薬の飲み合わせを詳しく解説した「健康食品ポケットマニュアル」(416ページ)をまとめた「健康食品管理士認定協会」(事務局・鈴鹿医療科学大学内)によると、血糖値改善をうたうトクホ製品と血糖値を下げる医薬品を同時に服用し、血糖値が下がり過ぎたとの症例報告があるという。糖尿病などの疾患がある人は、トクホを利用する際は医師に相談したほうがいいようだ。
ポケットマニュアルを編集し、健康食品問題にも詳しい加藤亮二・香川県立保健医療大学教授は「トクホは食品なので、あくまで健康な人が病気の予防目的で利用すべきもの」と強調する。例えば血糖値を下げる製品の場合は「太っていてこれから血糖値が気になるという人が、時々摂取して血糖値を下げながら生活し、糖尿病になるのを遅らせるという意義はあるのでは」と話す。
しかし現実には、血糖値の高い人がトクホを利用しているからという理由で、つい肉類などを食べ過ぎ、食生活の改善を怠ってしまうというケースもある。どんな人がどれだけ、どのくらいの期間摂取すればいいのかまで表示されていればよいのだろうが、加藤さんは「服用期間まで表示すると、医薬品の領域に入ってしまう」と、健康食品の表示の難しさを語る。
商品によっては最低限度の注意書きが小さく記されていたり、メーカーのホームページなどで詳しい説明がされている。しかし、インターネットを使わないお年寄りや「トクホは健康にいい」という漠然としたイメージで利用している消費者には、十分には伝わっていないようだ。
<虫歯の始まりである脱灰を抑制し、歯を丈夫で健康にします>と表示されたトクホのリカルデントガム(キャドバリー・ジャパン)。小さなパッケージの脇に、次のように書かれている。
<1日摂取目安量:2粒を同時に1日4回、1回あたり20分間を目安にお召し上がりください>
食品問題に詳しい蒲生恵美・目白大学講師が学生約300人に聞いたところ、このガムを食べている学生の多くが「1粒かむだけで効果がある」と勘違いしていた。
トクホの望ましい利用法を消費者にどう伝えていけばよいのか。蒲生さんはまず「消費者が表示をきちんと確認することが大事」としたうえで、「メーカー側も、注意しなければならない持病のある人は対象外とすることや、どういう試験で有効性が確かめられたかについて、もっと分かりやすく示す必要がある」と提言する。
◇制度見直しへ、国が有識者会議
トクホなど健康食品の表示を巡っては、消費者庁が昨年11月から有識者による検討会を設置し議論しており、今年度中にトクホ制度の改正も含む論点を整理する方針だ。
検討会では「有効性をうたって販売するすべての食品を網羅するルールを確立すべきだ」(全国消費者団体連絡会)、「トクホは機能性の表示があいまいで正しく伝わらず、改善すべきだ」(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会)などと、消費者団体から現行制度の見直しを求める意見が多く出されている。
業界団体の健康食品産業協議会も「健康食品全体を包括した枠組み作りが必要だ」と主張するなど、見直し自体に目立った異論は出ていない。ただ、何をどう見直すかといった具体的な方向性はまだ定まっていないのが現状だ。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100210ddm013100154000c.html -gooニュース

