「振り込め詐欺ではないですか」。銀行などの窓口でそう注意されても、現金を振り込んでしまう。そんな振り込め詐欺被害が県内で相次いでいる。銀行員らから「詐欺では?」と聞かれたら、「会社の取引」「住宅ローンの頭金」などと言うよう、犯人が指示しているらしい。
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長岡市では20~21日、息子を名乗る男が「会社のお金を使い込んで、弁償しなければならない」などと言って女性をだまし、郵便局から現金200万円を振り込ませる事件が2件起きた。五泉市でも21日、60代の女性が同様の手口で現金400万円をだまし取られた。
いずれも金融機関の職員から振り込め詐欺に注意するよう呼びかけられていた。五泉市の女性が現金を振り込んだ郵便局では、不審に思った局員が「気を付けて下さい」と声をかけたが、「会社の取引で振り込む」と強い口調で言われ、引き下がったという。
県警は被害を防ぐため広報・警戒活動を強めている。金融機関でも、被害に遭っているのでないかと思われる客には声をかけるなど「水際対策」をとっている。
だが、犯人が被害者を信じ込ませた上で「振り込め詐欺と間違われないように」と忠告し、銀行員らに声をかけられた際の対応の仕方を指示しているケースも多く、県警犯罪抑止総合対策室の岡本義美室長は「知っていてもだまされるケースがほとんどだ」と話す。
過去に数度、行員が声をかけて振り込め詐欺を未然に防いだ大光銀行は、「窓口に訪れる客は自分がだまされているとは思っていない。声かけを徹底するようにしてはいるが、各店舗で問題意識に差があるのも事実」という。
五泉署の武藤静男副署長は「振り込め詐欺の被害に遭う人は家族と連絡がつかないことに焦り、催眠状態にかかっている」と指摘。「一押し、二押しではなく三押しくらい食い下がり、粘り強く対応しないと、詐欺は防げない」
県警犯罪抑止総合対策室によると、県内で今年あった振り込め詐欺被害は9月末まででに
330件(前年同期比3割増)で、被害額は計約4億7450万円(同5割増)。今月も22日までに
14件、約1千万円の被害が発生している。
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●「マンション頭金と説明を」指示-忠告の郵便局長「納得」
「何度も気づくチャンスはあったのに」と、振り込め詐欺被害にあった長岡市の60代の無職女性は嘆いた。
「もしもし、タケシ(仮名)だけど」
21日昼すぎ、同居の息子を名乗る男から電話があった。息子より少し声が高く、柔らかい感じがした。「本当にタケシなの?」
「風邪をひいて熱が出て、声がおかしい。話があるから家に帰る」と、男はいったん電話を切った。すぐに同じ男から電話が入った。「友人に誘われ、インターネットで不正をして、会社をクビになる。携帯も取り上げられた。上司がお金を立て替えてくれたから、上司の携帯に電話して」
言われた番号に電話すると、少し年配風の別の男が出た。「400万円立て替えました。200万円ずつ2回、別々の郵便局で振り込んで下さい。郵便局に着いたら、携帯から電話して下さい」
女性は携帯を持っていない。「息子は私が持っていないと知っているはずなのに……」。上司に伝わっていないのかと不思議に思ったが、動揺していた。郵便局の近くに住む長女の家から電話すると伝えた。すると、「家族に知らせてはいけません」と言われた。
女性は郵便局近くの公衆電話から電話し、神奈川県内の郵便口座を指定された。
郵便局で、窓口の受付に確認を求められた。「振り込め詐欺が多発していますので」と、局長も現れた。女性は、犯人の男から「振り込め詐欺と怪しまれないように、マンションを買う頭金と説明するように」と言われていた。言われた通りにすると、局長も納得した。午後2時すぎ、200万円を犯人から指定された口座に振り込んだ。
次の郵便局に向かう途中、突然、胸騒ぎがした。「もしかして、だまされたかも」。自宅に帰って息子の携帯に電話した。その時はつながらなかったが、数分後、息子から電話があった。「何かあったの。仕事中だけど」
女性は、新聞やニュースで振り込め詐欺の話は嫌と言うほど聞いていたという。それでも、「息子がかわいそう、と言う気持ちが先走ってしまった」という。
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