「正当な理由なく、児童を登校させていない」-。新潟市教育委員会が5月上旬、校長名で児童13人の保護者に出した出席督促書が波紋を広げている。市教委は「保護者から『家庭で教育する』との連絡しかなく、就学義務を果たしていない」と異例の措置を取った理由を説明するが、保護者側は「子供の不登校に悩み続け、学校側とも話し合いを続けていたのに。一方的だ」と市教委の対応に憤る。保護者たちは新潟市内にフリースクールを立ち上げ、不登校の子供が学ぶ場づくりに乗り出している。「謎の不登校」と報道され、さまざまな憶測を呼んだ騒動の背景を探った。(永岡栄治、写真も)
今月、新潟市郊外の秋葉区天ケ沢新田にある「フリースクールP&T新潟校」を何度か訪ねた。工場跡地を取得し、改装した施設に近づくと、子供たちの歓声が聞こえてくる。約1000平方メートルの校舎は教室のほか、トレーニング器具や体育施設も備えている。
ここに小中学生ら28人が親の送り迎えで通っており、放課後だけ来る子もいる。講師2人が付いて各教科のドリルを進めるほか、直感力やイメージ力を養う右脳教育や英語、体育、美術、調理も学べる。元教員の母親が教えることもある。
驚いたのは、子供たちの表情が実に生き生きとしていることだ。「子供の心を大切にした教育をしていますから」と、講師の鈴木優子さん(45)は言う。
鈴木さんは15年前に旧新津市(現新潟市秋葉区)で幼児教室を始め、3年前から同市東区山木戸で、母親が互いの子供を育て合う方式の親子教室を開いた。現在は就学前の子供約60人が通っているという。
この教室を出た子供たちが小学校に上がり、学校教育に拒否反応を示すケースが相次いでいる。「先生が怒ってばかりで怖い」「やらされる勉強でつまらない」と、子供たちは口々に訴える。兄や姉が不登校で苦しむ様子を見たり、学校の雰囲気になじめず、1年生4人も登校をかたくなに拒んでいるという。
不登校に悩んだ母親たちが集まり、鈴木さんの協力を得て4月に塾を開いた。当初は鈴木さんが代表を務めていたが、今月からP&Tに改称、母親の一人の渡辺真由美さん(40)が代表に就任した。来月、NPO法人(特定非営利活動法人)化を申請する。
P&Tに通う小学3年の女児は1年生の6月、いじめのストレスで授業中にまつげを全部抜いてしまった。2年になると学校で吐くようになり昨年10月、担任や校長と相談して学校を休んでいる。その女児がここで見違えるように元気になり、鮮やかに前転や側転を披露してくれた。
渡辺代表らは「不登校の原因ははっきりしており、学校の了解も得ていたのに、市教委はなぜ事情も聴かずに督促書を出したのか」と憤る。
市教委によると、保護者たちは当初、「家庭で責任を持って教育する」と学校に説明し、塾については「代表に迷惑がかかる」と話さなかった。そのうえ、入学当初から不登校の1年生が4人いたことから、市教委は「子供を学校に登校させない異常な事態だ」と判断、校長に指示して督促書を出す事態に発展した。
佐藤満夫教育長は「督促書を出した児童の中に、不登校傾向の児童が含まれていたことが後で分かった」と認めたうえで、「子供は楽な方、楽しい方を選びがちだが、学校で集団生活を体験したり、苦手分野を克服するのは社会に出るうえで大切なこと」と、学校教育の重要性を訴える。
市教委は今月から、督促書を出した保護者との個別面談を進め、市教委が不登校児を対象に開いている適応指導教室の利用を呼びかけている。P&Tについては「学校復帰を前提としておらず、施設やスタッフも要件を満たしていない」(学校支援課)としてフリースクールとは認めず、視察にも消極的だ。
学校復帰を促す市教委と、フリースクール容認を訴える保護者たちの考えには、大きな開きがある。市教委はまずP&Tを視察し、子供たちの状況を確認したうえで、保護者と継続的に話し合うべきではないか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080626-00000038-san-l15

