研究段階にある体細胞クローン牛の国内市場での流通に向け、日本でも検討作業・手続きが始まった。米国当局や欧州、日本の研究機関で安全性を認める報告が相次いだためだが、死亡率の高さなど未解明のナゾもあり、倫理や法整備の議論不足を指摘する声も少なくない。内閣府の食品安全委員会が「安全」という結論を出せば、議論不足のまま、食品の市場流通が始まる恐れもある。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/e20080410003.html -gooニュース
◆高い死亡率
「クローン牛に日本人はネガティブ。死亡率も高い」。厚生労働省の諮問を受け、今月3日に審議を行った食品安全委で、委員の一人がこう指摘した。
クローン牛の死産や生後直後の死亡率は高い。農水省所管「畜産草地研究所」の報告書では、死産率は一般牛4・6%に対しクローン牛が16・4%。生後2~150日の病死率は4・3%に対しクローン牛は23・5%と差はさらに大きい。
しかし、報告書は、その差も「生後200日齢までに同水準になると考えられる」とし、一般牛とクローン牛は「生物的な差異は認められなかった」と結論づけている。死因として呼吸障害などを挙げているが、なぜ、そういう障害が発生するかは、はっきり分からない。
「理由が分からないのに、なぜ安全といえるのか」。消費者団体「食の安全・監視市民委員会」の水原博子事務局長は、こう不安を強調する。
◆倫理上の問題
日本のクローン家畜研究は、平成9年、国の科学技術会議の議論を経て、「大きな意義を有する」「人間の倫理上の問題にも直接触れない」ことを理由に、適宜推進すると決定された。
しかし、「一般の国民が知るレベルで倫理上の問題が議論されていない」という批判は根強い。
体細胞ではなく、受精卵を使ったクローン牛は、「通常の双子と変わらない」などの理由で国内でも少数、流通しているが、11年に報道で表面化した途端に強い反発が起きた。クローン技術とは異なるが、遺伝子組み換え食品も「消費者の拒否反応が強いため」(輸入業者)、日本ではほとんど流通していない。
クローン技術は、同じ肉質の牛を大量に“コピー”することを可能にするため、手が届かない高級和牛を安く供給できる利点も秘めている。だが、畜産農家の関心は薄い。理由はコストが高いから。「いまは牛を普通に繁殖した方がはるかに安価」(農水省)という。
◆表示の義務は
流通させる場合も「体細胞クローン牛」と表示させるべきか、どういうルートで流通を認めるのか、議論は進んでいない。一方で、輸入規制がなく、国外からなし崩し的に流通しないとも限らない。早急な議論や対策が求められている。
【用語解説】体細胞クローン牛
牛の皮膚や筋肉など体細胞の核と、核を抜いた未受精卵を融合させ、雌の子宮に入れて、人工的に出産させた牛。遺伝的に同じ牛が生まれる。牛の生産効率化などのために研究が進められているが、市場には流通していない。今月1日、厚労省が流通に向け、クローン豚とあわせて安全性評価を食品安全委員会に諮問した。体細胞の核でなく、受精卵の細胞を融合させる受精卵クローンもあり、こちらは欧米、日本などで少数だが流通が認められている。

