市民クラブの加藤なおとです。通告に従い、「長岡市にできる食の安全確保策について」質問を致します。〈導入〉今年になって発覚した中国産冷凍ギョウザ事件は市民に大きな衝撃を与えました。このような輸入食品をめぐる問題は近年立て続けに起きています。1986年にイギリスで端を発したBSE問題。2002年には中国産冷凍ほうれん草から殺虫剤などの残留農薬を検出。2006年には中国産スナップエンドウから殺菌剤の残留農薬検出と、例を挙げれば枚挙にいとまがありません。 このような一連の問題を、私達はどのように受け止めればよいのでしょうか?今回の中国産餃子事件の原因はまだ解明されていませんが、しかし、単にひとつの事件として殺虫剤を混入した「犯人」がつかまれば解決する問題でしょうか?例えばそこに、一部で報道されているように加工企業の労使問題が関わっていたとして、私達の食のリスクは、中国の労使問題まで関わっているという状況には変わりがありません。世界中から食料を調達している現状では、様々な地域の政治情勢、労使問題、衛生管理意識、輸送状態、その他の社会問題のリスクまで背負って日本に入ってくるわけです。そしてそれは、流通ルートが長くなればなるほど、様々なリスクがそこに関わってくることになるのです。地場産農産物を家庭で調理して食べる場合とは比較になりません。食の海外依存の危険性をあらためて考えさせられた事件です。そこで穀物などの食料をめぐる世界情勢と、我が国の現状を通して、本市における食料自給率向上策をはじめとする食の安全確保対策について質問をさせていただきます。〈現状:長い流通ルート〉食の海外依存状態を表すには、食料自給率と共に、食料の輸送距離を示す指標として、フードマイレージという考え方も近年使われています。農水省の中田哲也氏の試算によると日本は、9000億トン・キロメートル、一人あたり7100トン・キロメートルと世界でダントツの一位です。韓国やアメリカの約3倍、イギリス・ドイツの約5倍、フランスの約9倍にもなります。(食べ方で地球が変わる)〈最近の動き〉また近年バイオ燃料の生産拡大により、大量のトウモロコシが燃料向けに消費されており、国際穀物市況が高騰し、日本の輸入飼料価格の高騰を招き、トウモロコシへの作付け転換と、干ばつなどの異常気象により小麦や大豆の生産量も減少、日本の食料品の値上げが次々と起こっています。最近では農林水産省が昨年10月に10%引き上げたばかりの輸入小麦の売り渡し価格を、4月1日からさらに30%引き上げると発表しました。国際相場は、この三年で小麦は3倍、トウモロコシ、大豆は2.3倍にも上昇し、いずれも過去最高を記録しています。2000年には30.5%あった穀物の期末在庫率は、2007年末には15%と推計されており、食糧危機といわれた1970年代はじめの水準にまで減少しています。〈長期的な動き〉長期的な穀物動向として、注目しなければならないのは中国、インドといった、とてつもなく大きな人口を抱えている国々の経済発展です。これらの国々は日本がたどったと同じように、所得が増えるに伴って食の多様化が進行し、肉類の消費増加傾向が見られ、畜産飼料用穀物の需要が劇的に増えています。例えば中国では35年間で穀物需要量が2倍程度なのに対し、そのうちの畜産飼料用穀物需要量は9倍になりました。〈輸入リスク1〉このように、長期的に見てもこれから先、日本が手に入れることのできる国際穀物はどんどん逼迫していきます。食料が輸入できるということは、日本にお金があり、かつ、それを売ってくれる国がなければ成立しないわけです。現に中国、ロシア、ウクライナ、インド、ベトナム、アルゼンチンなどでは食料の輸出制限の動きが広がっており、自国民の食糧事情を悪化させ、暴動、あるいは政権交代のリスクを犯してまで輸出してくれる国は、世界のどこにもないことは明白です。同盟国アメリカでさえ自国の穀物需給が逼迫すると見るや、緊急的に大豆の輸出禁止を実行した、1973年のことを忘れることはできません。アメリカはその後1979年には政府が輸出制限を随時行うことができる「輸出管理法」を成立させています。〈輸入リスク2〉輸入食料生産に使われた水のことをバーチャルウォーターまたは仮想水と呼びますが、日本は、毎年640億立方メートルと、ほぼ日本の年間灌漑用水使用量(580億立方メートル)に匹敵する仮想水を輸入していることになります。将来的に水不足が予想されているアメリカやオーストラリアに食料を依存していることは、不安要因であると共に、この水収支の面から非効率的と見られています。水をめぐる争奪が危惧されている世界情勢の中で今後の食料輸入の不安定さがここからも見えてきます。〈現状認識〉さて、このように海外から食料を輸入している現状と現在の世界穀物状況を俯瞰してみると、今回の中国産ギョーザ事件を見るまでもなく、今後の我が国の食料事情については、おおきな不安を抱かざるを得ません。人は、裕福になるに連れ、「腹一杯食べたい」から、「おいしいものを食べたい」に変化し、さらには「健康にいいものを食べたい」と思うようになるといいます。また人は、限界を知ってはじめてそのものの価値を認識するといいます。人生、然りであります。そして地球資源や、食料・農産物もいまや、その限界を私達の目の前に示しつつあり、食料の安定的な確保には、これまでと違った視点で取り組む必要があると思えます。もやは、これまでにない、危険な状況に入ってきているのではないでしょうか。〈主張〉いまこそ、海外に依存している我が国の食料の現状を見直す契機とするべきです。我が国のカロリーベースの食糧自給率は昭和43年には73%あったものが40年たった現在、39%まで下がってきております。この原因は、いうまでもなく日本人の食生活の変化によるものです。例えば一人一年あたりの供給純食料で見ると、この40年間で米の消費量がほぼ半分になったのに対し、肉類は5倍、油脂類は3倍と、これほどまでに短期間に食生活を変化させた民族はかつてなかったといわれるほど大幅に変化しています。そしてその結果、食料の大部分を海外に依存する状況となったわけです。これは、欧米先進国各国、例えばフランス130%、アメリカ119%、ドイツ91%、イギリス74%などと比べても極端に低い数値といわざるを得ません。特に日本と同じような島国のイギリスは先の大戦においてドイツ軍の海上封鎖により、国民の食糧備蓄が底をつきそうになり、冷や汗をかいた経験から大幅に自給率を向上させてきました。人口の多い国ほど自給率を高める必要性があるのは明らかです。人口一億人以上の国は世界で11カ国ありますが、その穀物ベースの自給率を見ると7カ国が90%以上で、最低でもナイジェリアの84%であり、我が国の27%という穀物自給率は、愕然とするほど異様に低いものです。食の安全確保に資する自給率向上は、すでに食料・農業・農村基本法により国の方針が明確に打ち出され、地方公共団体・消費者の責務・役割も明記されています。それにもかかわらず、残念ながらこれまで自給率は改善する気配はありません。〈質問〉まず、中国産冷凍キョウザ事件や、これまで述べてきた食をめぐる現状をふまえ、食の安全確保に対する市長の基本的な認識をお伺いします。さらに、市民の食の安全を守るために長岡市ができる政策についてお考えをお聞かせ願いたいと思います。また、長岡市の食料自給率の現状は、米の消費超過量を除くと28%であると、ホームページ上で明らかにされていますが、このことをどう認識しておられるのかお聞きします。この自給率向上に向け本市はどのように取り組むのかお伺いします。小麦をはじめとする穀物の高騰が市民生活に及ぼす影響をどう認識しているのか、また、今後どのように対応されるおつもりなのかお考えをお伺いします。〈要望〉中国産冷凍ギョウザ事件などを入り口に、我が国の食料の現状を見てきましたが、市民はあらためて食の不安を強く感じており、中国産品や冷凍加工食品の買い控えが起こっています。リスク回避の観点から、手作りを心掛ける傾向も出てきているようです。 安全な食の確保のため、そしてそれに必要な供給農地を持つ本市の担うべき役割をきちんと認識し、現場の地方自治体において「実践」し、国・県にも「提言」できるような効果的な施策を要望して質問を終わります。参考2002年 冷凍ほうれん草 クロルピリホス〈殺虫剤〉ほか残留農薬2006年 中国産スナップエンドウ メタラキシル(殺菌剤)長岡市の取り組むべき政策 (提案)・食料消費面 わかりやすく実践的な食育 地産地消 国産消費拡大 消費者の信頼確保(JGAP導入)・農業生産面 実需に即した生産の促進 食品産業と農業の連携強化 効率的農地利用 観光を視野に入れた農産品つくり・義務教育施設に農園を義務づけ 先生に農業研修を義務づけ・農業団体に指導を義務づけ・個々の経営体を育成→顧客をもった経営体なら農地面積を増やしていく→耕作放棄地はなくなる・学校給食の完全米飯化