相談内容
携帯電話会社の販売店でスマートフォン(以下、スマホ)を契約し、スマホ代金は一括で支払った。通信契約は2年契約だったが、数カ月後、違約金を払って解約した。その後、低額な料金の別の通信会社と新たに契約し、その通信会社のSIMカードを、解約した携帯電話会社のスマホに入れて使用していた。しかし3カ月後、メールの送信時や着信時に画面をタップしても反応しない、かかってきた電話に出られない等の不具合が何度か発生した。スマホの不具合だと思い、修理を依頼するためスマホを購入した携帯電話会社の販売店に出向いたところ、「当社との通信契約は解約されているため、対応できない」と言われた。そこで、スマホのメーカーに申し出たところ「当該スマホについては、携帯電話会社経由でないと修理対応はできない」と言われた。修理を依頼したいが受け付けてくれる窓口がない。どうしたらいいか。
(70歳代 男性 無職)
結果概要
相談を受け付けた消費生活センター(以下、受付センター)では、相談者から契約内容や経緯の詳細について聞き取り、周辺情報を調べた結果、以下のことが分かった。
相談者のスマホのメーカーのホームページでは、当該スマホのアップデートファイルが用意されていた。相談者のスマホに不具合が生じた時期と、アップデートの開始時期があまり離れていないことから、アップデートができていないことによる不具合の可能性が推測された。受付センターが相談者のスマホをアップデートできないかメーカーに問い合わせたところ、「アップデートファイルは携帯電話会社のサーバーを通じて配信するため、当社で当該スマホにファイルをダウンロードすることはできない。また、相談者が使用しているスマホはSIMフリー対応のスマホではない」との回答があったのでメーカーでの対応が見込めなかった。そこで受付センターは相談者がこれまで通信契約をしていた携帯電話会社へ相談者の状況を伝えたところ「通信契約の解約後は、当社が販売したスマホであっても、修理の取り次ぎやソフトウェア等のアップデートもできない。相談者のスマホはSIMフリー対応のスマホではないが、新たな契約先は当社のMVNO(仮想移動体通信事業者)*である通信会社であったため、偶然に利用できたものと思われる」と回答があった。相談者のスマホの不具合への解決策は見つからず、また不具合の原因も判明しなかったため、受付センターから携帯電話会社に、メーカーからの回答内容も伝え、再度検討を依頼した。
すると、後日携帯電話会社から「修理費用は実費負担になるが、当社との通信契約を解約していてもメーカーへの取り次ぎは行う。スマホを当社の販売店へ持参してくれれば、修理費用の見積もりを出す。見積もりを見て修理するか判断してほしい」との回答があった。
受付センターから上記の情報を得た国民生活センター(以下、当センター)は、今後格安な料金でサービスを提供するMVNOの利用者の増加が見込まれるなかで、相談者のようなトラブルも発生する可能性があることから、スマホの修理対応窓口や、ソフトウェアのアップデート対応等について、当該携帯電話会社に問い合わせたところ、以下の回答を得た。
- (1)当該会社が販売したスマホであれば、トラブル発生時に当該会社との通信契約がなくても、販売店が修理対応等の窓口になる。中古携帯電話販売店等でスマホを購入した場合でも同様に対応する。ただし、携帯電話会社が提供する修理サービス等のサポートは利用できないため、修理費用が高額になる場合もある。
- (2)機種によるが、最近のスマホは携帯電話会社との通信契約がなくてもWi-Fiに接続すれば、OS等のソフトウェアのアップデートが通知される。この通知はスマホのメーカーのサーバーから発信され、携帯電話会社の通信を介さずに行われる。
当センターから受付センターへ上記の回答を伝えたところ、後日、相談者から「Wi-Fiに接続してアップデートしたところ、スマホの不具合が解消した」と受付センターへ連絡があった。これを受け、受付センターから携帯電話会社へ、携帯電話会社が過去に販売したが現在は通信契約がないスマホについても、ソフトウェア等のアップデート方法や、修理対応の窓口に関する情報などを消費者に正確に情報提供してほしい旨を要望し、相談を終了した。
- *移動通信サービスに係る無線局を自ら開設または運用している事業者(MNO)の提供する回線を使用して移動通信サービスを提供・運用している事業者のこと。
問題点
本件は、相談者のスマホの修理依頼について、携帯電話会社とスマホのメーカーの双方が対応できないと回答したため、トラブルが解決しなかったものである。
格安な料金で使用できるMVNOの利用者が使っているスマホ等の故障対応の問題をはじめ、OS等のアップデートにMVNOが対応していない等のトラブルになった際に、対応の可否も含め、消費者がどこに申し出ればよいのかの周知は、現状としてMVNOも携帯電話会社もともに必ずしも十分とはいえない。
さらにMVNOによっては、SIMカードだけ販売する場合もあれば、スマホ等の本体機器も販売する場合があり、提供するサービスにも差がある。また、MVNOに限らず、スマホ等に不具合が発生した場合は、要因としてスマホ本体、OSのバージョン、使用しているアプリケーション等、さまざまな原因が想定されるため、1つずつ整理していく必要がある。
ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。
http://www.kokusen.go.jp/jirei/data/201509_1.html