県内はこの冬、上・中越地方を中心に「平成18年豪雪」以来の記録的な大雪となった。 雪下ろしなど除雪作業中の死者は7日現在、24人を数え、全国最多。 うち65歳以上の高齢者は6割、15人を占める。 対策本部などを設置して警戒にあたった11市町で、除雪支援の必要な世帯は計約7600世帯。高齢・過疎化が進み、除雪の担い手となる若者も減っていく中、高齢者世帯の除雪作業は大きな課題となっている。
久々に晴れ渡った2日、上越市大島区の農業吹山公一さん(74)は、かんじきをはいて屋根に上がった。 十日町市に接する豪雪地帯で、市の総合事務所の2日の積雪は約2.3メートル。 この冬、5度目の雪下ろしで、2回は市内に住む長男が駆けつけてくれた。
汗を拭きながらはしごを下りた吹山さんは「自分でやるのは当たり前。 夏、田んぼの草取りをするのと同じさ。 できるのに人に頼んだら『どうかしたのか』と言われる」。 周囲の高齢者の多くも、体が動くうちは自分で雪下ろしをしているという。
妻の由美子さん(66)と2人暮らし。 相次ぐ転落事故の報道は耳にしているが、作業には慣れており自分が落ちるとは思わない。 高齢者の事故が多いのは、「体力的なものより、屋根に上がるのは65歳以上が多いからだ」とみる。 若者は都市部に出て、農村や山間部は高齢者だけの世帯が増えている。
同市によると、災害救助法の適用で高齢者だけの世帯や障害者などの除雪支援が必要な世帯には、適用日から今月18日までの作業に対し13万4200円を上限に除雪費が助成される。 ただ高齢でも自分でできる人や一定以上の収入がある人は対象外だ。 制度上も「可能な限り各世帯で」が原則。 同市の約8800の要援護世帯のうち助成を申請したのは7日現在約3600世帯。 うち1割近い340世帯は申請が却下された。
地元建設業者によると、雪下ろしの作業員1人当たりの時給は約4千円、複数で行うため1回当たり数万円から、排雪まで含めると10万円を超すこともある。 助成対象にならない高齢者世帯には費用が大きな負担となる。
■若者減少 ボランティア頼みの綱に
こうした中、どの自治体もボランティアの手を借りて支援にあたっている。
死傷者が県内最多の長岡市は、雪害ボランティアセンターを設置。 北海道や東京都、石川県などを含む県内外の174人が4~6日の3日間、高齢者宅を中心に47カ所の除雪作業に汗を流した。
ただ、市内で除雪支援が必要とされる世帯は1167世帯もあり、優先されるのは緊急性のある世帯だ。
同市旭町1丁目の無職河野太郎さん(75)方では4日午後、ボランティアの男性5人が雪かき用シャベルを使って家の周りの雪を集め、脇を流れる柿川に運んでいた。
河野さんは妻(74)と2人暮らし。 「私自身、足やひざが痛いし、妻は昨年大病をしたばかり。 除雪してもらえて本当にありがたく、感謝の気持ちでいっぱい。 今年の雪にはホント、まいった」と話していた。
除雪費の助成やボランティアで支援できる人数は限られている。 県危機対策課は、2人以上での除雪を呼びかけているが、「地域から人が、支える若者が、いなくなってきている。 1人で作業せざるを得なくなっている高齢者は多く、難しい問題だ」としている。(遠藤雄二、松本英仁、大内奏)
http://mytown.asahi.com/areanews/niigata/TKY201102080419.html-asahi.com