「こんな介護施設は避けるべき」6つのポイントをベテランケアマネが座談会で提言!
ベテランケアマネ4人による座談会を開催し、「介護施設の見極め方」を聞いた。施設の見学で見るべきポイントや問題点のほか、「いい施設」「悪い施設」を見極めるポイントを、介護の専門家たちの本音トークから学ぼう。
◆ベテランケアマネ座談会開催「いい施設」「悪い施設」の見極め方
介護の成功や失敗の分かれ道は一体どこにあるのか。4人の現役ケアマネたちに本音を聞いた。
■座談会に参加してくれたベテランケアマネ4人
●A子さん:45才。ケアマネ歴12年。無理解な市役所の福祉課担当者と、利用者との板挟み状態が現在のいちばんの悩み。
●B男さん:53才。20年以上のケアマネ歴のある大ベテラン。高齢者施設の職員だった経験を持つ業界のエキスパート。
●C郎さん:59才。ケアマネ歴18年。事業所の代表を務めており、日々、多くの利用者や家族からの相談に向き合っている。
●D恵さん:62才。ケアマネ歴20年。以前は医療関係の仕事に就いていた。介護支援専門員連絡会の会長を務めた経験も。
1.職員同士の雰囲気がギスギスしている
B男 まず見るべきは、職員同士の雰囲気。ギスギスしているところは、職員が疲弊していて余裕がなく、細かな点まで気が回らない恐れがある。
C郎 正直、施設によって職員のレベルにかなり差があります。言葉の使い方が乱暴だったり、入所者を“ちゃん”づけで呼んだり、赤ちゃん言葉で話しかける職員がいる施設は信用できない。過去に施設のケアプランを担当したとき、居室担当の職員に入所者の持病を尋ねたら、「知りません」と言われて驚きました。
2.職員が「手が離せないからちょっと待って」と言う
B男 事前の施設見学の際、訪問者にあいさつしたり、入所者に呼ばれたらすぐに駆けつけるスタッフがいる施設がおすすめです。「手が離せないからちょっと待って」と言っていたら要警戒。現場に長くいるとどうしても危機感が薄くなりがちですが、入居者のSOSがたとえ100回目まで無駄足だったとしても、101回目は緊急事態ということがある。
3.生活フロアが不潔な施設
C郎 見学へ行ったときに、中の状況をどんどん見せてくれる場合はいい施設の可能性が高い。
生活フロアが不潔だったり、職員がバタバタと走り回っている施設ならば普通は隠すので、生活スペースを見せる施設はサービスの質に自信があるのでしょう。
4.車いすに”乗せっきり”の利用者がいる
A子 利用者が寝てばかりだったり、車いすに乗ってポツンとしている施設も要注意。寝たきりならぬ、“寝かせっきり”や、車いすの“乗せっきり”は、介護をする側の都合を反映しています。見学の際、訪問した最初と帰るときで、ほぼ居場所が変わらない車いすの利用者がいたら危険信号です。
5.最新の施設だからといって安心ではない
D恵 一般の人は、新しい建物に騙されやすい。特に家族は、「最新の施設の方が安心だ」と思いやすいのですが、建物内の動線に職員がなじむまで半年~1年かかるといわれています。
不測の事態が起こり得る高齢者施設では、動線の確保は最重要項目です。
6.日常生活の細やかな報告はあるか?
C郎 利用者に関するポジティブな出来事まで報告してくる施設は、家族にとっていい施設かもしれない。
病気や転倒などネガティブな報告は、家族に伝えないとクレームにつながるため施設は気をつけますが、「今日はひとりで立ち上がれました」「今日は庭の散歩をしました」という日常のポジティブ要素をわざわざ伝えてくる場合は信頼できます。
A子 でも、やっぱり目立つのは、家族側の要望が高すぎるケース。特養に入所した母親の肌が夏場に汗で蒸れて、少しかぶれてしまった。それを見た娘さんが、「皮膚が赤くなっているのはどうしてですか!?」と職員を過剰に問い詰めるということがありました。
高度な医療サービスを求めるなら、特養ではなく医療法人が母体のサービス付き高齢者住宅などに入居してほしい。
◆行政のと家族に挟まれるケアマネの苦悩も
B男 施設だけでなく、行政の問題も大きいですよね。利用者や家族は在宅介護を続けたくて介護サービスを利用するのに、自治体の福祉担当者は「月の半分以上もショートステイを利用するなら、施設に入ってもらった方がいい」と平気で口にします。
環境を変えることは高齢者にとって大きな負担となり、“家族に捨てられた”とのネガティブな思いに駆られやすい。それを行政サイドが理解していないのは大きな問題です。
C郎 いまは子供が学校に行きながら親や祖父母を介護する「ヤングケアラー」が社会問題化していますが、自治体の福祉担当者は、「お孫さんは介護できないのか」と平気で言いますからね。その無理解には驚くばかりですが、行政と利用者に挟まれたケアマネは行政の言い分も伝えなくてはならない。結果として利用者や家族との関係が悪くなることもあります。
A子 行政の担当者が変わるとそれまでの解釈が変わることも多いですよね。本当にいい加減にしてほしい。
C郎 多少は問題がありそうな施設でも、家族が介護で切羽詰まっていたら、ケアマネとして入所を斡旋することがあります。そうした場合でも、できるだけ家族が面会に訪れて施設の状況を把握して、不明点があればスタッフに遠慮なく尋ねてほしい。会いに行けば、利用者の“捨てられた”との感覚も薄くなります。
◆介護施設の種類と特徴、おおよその月額費用
介護施設は、利用者の状況や性格、理想とする生活に合わせて施設を選ぶことが重要。
●特別養護老人ホーム
通称「特養」。要介護3以上の高齢者が入居対象。現在も全国で30万人近くが待機しており、自宅での生活が困難なケースほど入所を優先される。
5万~15万円
●有料老人ホーム
民間企業が運営する施設。「介護付き」「住宅型」「健康型」など、さまざまなタイプがある。料金は幅広く、入居一時金が数千万円する高級施設も存在する。
15万~150万円
●介護老人保健施設
リハビリなどを必要とする要介護1以上の高齢者が入所できる公的施設。自宅へ戻ることを目的とした施設のため、基本的に3~6か月で退居となる。
6万~16万円
●サービス付き高齢者向け住宅
通称「サ高住」。要介護度が軽い高齢者向けの施設で、マンションのように賃貸契約を結ぶ。最近は、介護付き有料老人ホームと同様のサービスが提供される「介護型」も増えている。
5万~20万円
●ケアハウス
「軽費老人ホーム」とも呼ばれ、比較的安い費用で入居できることが魅力。「介護型ケアハウス」では、介護サービスを受けられる。入居希望者が多く、すぐには入居できない可能性も。
6万~20万円
●認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
主に認知症の高齢者が対象。5~9人の利用者が共同生活を送り、家庭的な環境で入浴、排泄、食事などの支援、機能訓練などを受ける。
12万~20万円
●養護老人ホーム
社会復帰を前提とし、経済的な理由などで自宅生活が困難となった高齢者を受け入れる。入居には、役所の福祉課や地域包括支援センターなどで入所基準を満たしているか確認する必要がある。
0~8万1000円
◆こんな施設には要注意!6つのポイント【まとめ】
1.職員同士の雰囲気がギスギスしている
2.職員が「手が離せないからちょっと待って」と言う
3.生活フロアが不潔な施設
4.車いすに”乗せっきり”の利用者がいる
5.最新の施設だからといって安心ではない
6.日常生活の細やかな報告はあるか?
教えてくれた人
ケアマネ歴20年クラススのベテランケアマネ4名(匿名)