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泳いでいるときにも起こる熱中症 猛暑のプールを安全に楽しむ工夫は

【泳いでいるときにも起こる熱中症 猛暑のプールを安全に楽しむ工夫は】


 いよいよ全国的に梅雨が明けて、猛暑の季節に突入しました。本日、8月2日も全国的に猛暑日になる予報が出ています。子供たちにとってはプールで泳いだり、水遊びをしたりするのに最高の季節です。
 昨年の今頃、暑すぎて屋外プールの中止が相次いだことを覚えていますでしょうか。プールで泳いでいても熱中症になる場合があるという理由からです。その一方で、楽しみにしてプールに来たのに、中止を知ってがっかりする子供の姿も。安全を考えながら、子供たちの期待に今年はどうやって応えればいいでしょうか。

熱中症が原因だと思われる水難事故例

事例1 地方国立大学の室内プール(室温33℃、水温30℃、湿度87%)で水泳部の男子学生(当時21歳)が50 m を全力で泳ぐ練習を8本こなしたところでコースロープにもたれかかるようにして動かなくなった。顔面は赤く熱く、意識がもうろうとしていたので、ただちに陸にあげて、冷水タオルで体をぬぐいながら様子をみたところ、意識が回復した。病院での診察結果は熱中症だった。
事例2 公営プールで朝の気温30℃、日中気温36℃の条件で監視業務をしていた男性(当時24歳)がプールの水を体にかけようとプールサイドからプールに身を乗り出したところ、落水した。その後、自力であがろうとしたら、脱力してあがれなかった。周囲の監視員の手助けでプールから上がることができた。体温が38℃を超えていたので、直ちに病院で診察を受け、熱中症と診断された。
 以上の事例は閉め切った室内で無風状態であったり、直射日光を浴びる炎天下の長時間作業だったり、熱中症対策が十分ではありませんでした。プールでは熱中症が重大な水難事故に発展する最初の一歩になるので、プール管理者は気温が高くなれば入場者の安全に一層気を配らなくてはならなくなります。

屋外プールの中止の基準は?

 まず明確化された標準は特に温度の高いほうでは存在しません。その一方で、自治体が独自の基準で開催・中止を決定している例があります。一例として、新潟県内のある自治体では、屋外公営プールの開放基準を気温と水温との合計が65℃未満としています。(筆者注:筆者が数字を推奨するものではありません)
 YAHOO検索で「プール 中止 65℃」をキーワードにして調べた結果、自治体から公立学校に送達した複数の熱中症対策マニュアルが見つかりました。そこでは「屋外プールの安全の目安として、水温と気温を足した温度が、65℃以上になる時には適さない」という文言がありました。さらに、小学校等から保護者への連絡文書の中に「熱中症予防のためのプール中止判断基準9時の水温+11時~12時の予想最高気温=65℃以上」との文言も見られます。
 福井新聞は次のような見出しで問題提起しています。この記事を読むと、中止基準の一つに午前11時時点で予想最高気温が35℃以上としていることがわかります。
熱中症予防の新基準で小学校のプール開放できず 福井市、晴れでも入れない皮肉な状況に (福井新聞 7月30日)

安全管理と子供の期待とのはざまで

 「夏休みにプールに出かけて体を冷やしながら運動する。そして楽しい思い出を作る。」多くの経験から、このことは子供の発育にとっていいことだと感じている方が多いのではないでしょうか。一方で、大事な子供たちを預かる学校プールや公営プールにとってみれば、水難事故につながりかねない熱中症リスクがあるなら、そのリスクから子供たちを守ろうと真剣に考えていることと思います。昨年の夏から大きな話題となったプールの熱中症対策は、まさにこのはざまの中でどうすればよいのか、という問題をはらんでいるわけです。この問題を解決するために、遊泳者が熱中症予防のコツを覚えて安全に楽しめるプールに変えればよいわけで、そのための工夫があるのです。
 

なにを参考に安全管理すればよいか

 数ある運動の中で冷水に体を浸すのが遊泳の特徴で、熱中症対策は陸上運動とは一線を画します。独立行政法人日本スポーツ振興センターが平成31年3月に発行した「学校屋外プールにおける熱中症対策(ここではプール熱中症対策マニュアルとします)」がいま最も信頼のおけるマニュアルとして、ここに紹介します。
 まず、安全対策を立てるためには、状況分析が重要です。熱中症対策を立てるには、つまりプールにおける熱中症の発症状況を把握する必要があります。プール熱中症対策マニュアルでは、学校管理下におけるプールでの熱中症発生の実態と事例と件数を紹介しています。調査期間中のわが国の児童・生徒の総数からみれば少数ですが、水泳中であろうと熱中症になり、中には水難事故につながりかねない症例もあります。
 次に、対策を立てるための根拠をしっかりさせましょう。物理では、(1)水は空気に比べて熱しにくく、冷めにくい性質をもつ、(2)水が蒸発するときには気化熱として熱を奪う、ことを教わります。このことを利用して、プール熱中症対策マニュアルに記載されている、「水温が中性水温(33℃~34℃)より高い場合は、体温を下げる工夫を」の部分を解釈してみましょう。
 屋外プールの場合、例えば猛暑日の日中でも水温は気温より低くなります。それは水が熱しにくい性質からきています。つまりそのような日でも水に入れば熱くなった体を冷やす効果があります。ただし、水温によっては冷えない場合があります。その境界が中性水温です。お風呂なら中性水温以上なので体が温まり、冷たいプールに入れば中性水温以下なので体が冷えます。つまり、水温の目安として中性水温はひとつの根拠になります。
 ある程度の水深があり、管理された屋外プールでは水温が34℃になることはそうそうありません。でも体が熱くなってきたと感じたら、体温をさげる工夫をすればいいのです。プール熱中症対策マニュアルでは、「冷水シャワーを浴びる、日陰の風通しの良いところで休む」としています。
 空気中では熱が体の外に顕著に放出されます。それは体温より気温が高くても起こります。なぜかというと、体から出る汗が蒸発するときに、気化熱という形で体の熱を奪うからです。プールから上がれば体表面に付着している大量の水が徐々に蒸発していきます。その間は常に気化熱として体から熱が奪われます。どの程度の威力があるかについては、参考程度にミスナールの計算式で計算してみると面白いです。例えば気温40℃、湿度50%、風速1 m/sなら体感温度は34.4℃で、汗が蒸発する程度でもここまでは熱が取れるということです。
 実務的には、夏の屋外プールでは「体が熱く感じたら、プールから上がって冷水シャワーを浴びるか、風通しのよい日陰で休んでください」とアナウンスを繰り返します。家庭でも家族で同様に確認しあってからプールに出かけます。これだけの工夫で、熱中症リスクを抑えてプールを楽しむことができます。

遊泳者よりも監視員が問題

 学校プールにしても、公営プールにしても、監視員の熱中症対策は無視できない重大な問題です。熱中症になり調子の悪くなった遊泳者をいち早く発見し、陸にあげて応急手当をしなければいけない監視員。炎天下の中プールサイドに立ちっぱなしでは、脱水をおこし、じきに体温は上昇します。すなわち、監視員のほうが遊泳者より熱中症のリスクを負うことになるのです。監視するなら図1のように日陰で行い、水分を十分にとって、時々プールに入るか、クーラーで体を冷やすか、する必要があります。熱中症にならないまでも、暑さで注意が行き届かなくなり、監視がおろそかになってもいけません。

 筆者が若い頃11年間にわたり公営プールの監視員をしていた時には、遊泳者の休憩時間に水中確認として交代でプールに入って10分ほど体を冷やしながら仕事をしていました。それでもフェーン現象で気温が38度を超した時には、ホースで水道水を体にかけながら監視するというときもありました。水難事故を防ごうと、学校プールの監視業務に保護者が対応するときには、こういった工夫も参考にしていただければと思います。

おわりに

 基準で閉鎖するプールから、遊泳者が熱中症予防のコツを覚えて安全に楽しむプールに。水難学会をはじめ、水の現場で活動する関係者は、「夏休みに子供たちにはプールで遊んだり、泳ぎの練習をしてほしい」と願い、暑い日には工夫して、安全を確保しつつ、子供たちの期待に応えようと頑張っています。ういてまて教室では暑い日は最初から衣服を着用した状態で練習に入ります。背浮きをするだけ等にとどめて運動量を下げ、練習終了後にはすぐに衣服を脱いで熱を放散します。必要があれば冷水シャワーに向かいます。この夏の屋外プールにて、ぜひ体を冷やす工夫を皆で考えて、暑さを乗り切りましょう。

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