■「1人で悩まず」呼びかけ
犯罪被害者やその家族のサポートを行う「県警犯罪被害者支援室」に昨年寄せられた1713件の相談のうち、高齢者を中心に被害が多い特殊詐欺の被害者からの相談はわずか20件にとどまっていることが県警への取材で分かった。被害者はだまされた恥ずかしさや自責の念から相談をためらうとみられ、同室の臨床心理士、登坂比奈子さん(42)は「1人で悩まず、被害者支援室を利用してほしい」と呼びかけている。(宮野佳幸)
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県警生活安全企画課によると、昨年1年間の特殊詐欺被害件数は972件で、うち最も被害が多いオレオレ詐欺は538件だった。登坂さんは「特殊詐欺の被害相談は、とても悩んでいる人が多い」と話し、相談に来られず悩みを抱える被害者が潜在的にいることを危惧している。
登坂さんによると、多くの被害者は詐欺の手口を知っていたにもかかわらずだまされてしまったため、罪悪感や自責の念に駆られてしまうという。電話の音が怖い、夜眠れないといった症状が出ることもある。
また、「詐欺被害はお金だけでなく、自分の判断を信じる力を奪い、世の中は安全だと思って生きてきたことが覆される」と精神的被害の深刻さを指摘する。
過去の相談例で、平成26年に約200万円の詐欺被害を受けた女性は、家族から「終わったことだから仕方がない」と慰められたが、本人は「忘れられないし、切り替えられない」と悩み続けたという。
オレオレ詐欺などの手口では、弁護士や上司役らが電話に出て、子供や孫が窮地に陥っているという話に臨場感を持たせ、金銭的解決のタイムリミットを設けることで焦りを誘う。被害者は「心理的な視野狭窄(きょうさく)状態」(登坂さん)になり、手口を知っていてもだまされてしまう。
登坂さんは「被害に遭ってしまったら、家族は助言するよりも本人の話をよく聞き、気持ちをくんであげることが立ち直るために大切だ」と話している。
問い合わせや相談は同室フリーダイヤル0120・381858。
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