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<配偶者控除見直し>女性働きやすさ、道半ば

 2017年度税制改正大綱で、配偶者控除の見直しが決まった。自民党税制調査会や財務省は当初、女性の働き方に左右されない公平な税制の導入を目指したが、フルタイム勤務に比べてパート勤務が優遇される仕組みは変わらず、女性が働きやすい仕組みを作るという当初の目的は道半ばに終わった。【横山三加子、大久保渉】

 ◇なお残る不公平感

 「パートで働くことが女性の社会進出というなら、違和感がある」。東京都内で共働きの女性(32)は不満を漏らした。子供は欲しいが、仕事を続けながら十分な保育サービスを受けられるか不安だ。「配偶者控除を拡大するなら、子育てしやすい環境作りに税金を使ってほしかった」という思いは強い。

 配偶者控除は、配偶者(主に妻)の収入が一定以下なら、稼ぎ手(主に夫)の所得税を減らす(控除)制度だ。「妻の生活に最低限必要なお金には税金をかけない」という趣旨だが、妻がパート勤務だと、その収入にも同じ趣旨で税金を減らす仕組みがあり、「二重の控除」となっている。一方で妻がフルタイム勤務だと、夫は配偶者控除の恩恵を受けられず、「不公平だ」との批判は根強い。

 このため自民税調や財務省は当初、配偶者控除を廃止し、女性の働き方にかかわらず、夫婦であれば同じ控除を受けられる「夫婦控除」の導入を模索した。しかし、すべての夫婦を対象にすれば、配偶者控除に比べて控除の恩恵を受ける世帯が大幅に増え、巨額の減税となる。税収の落ち込みを避けるには所得制限を設けて対象を減らす必要があるが、中間層まで恩恵を受けられない事態になれば、世論の猛反発は必至だ。

 そこで浮上したのが、配偶者控除を拡充して女性の就労を支援するという“妥協策”だった。今回の改正で、38万円の配偶者控除を満額受けられる要件を、「配偶者の年収103万円以下」から「150万円以下」に引き上げた。パート主婦はその分、勤務時間を増やせる。高所得世帯は控除の対象から外し、税収は変わらないようにした。

 見直しに期待するのは、人材不足に悩む企業だ。東京都足立区のスーパー「ベニースーパー佐野店」の花沢一店長によると、約60人の従業員のうち16人が年収を103万円以下に抑えている。時給の上昇で労働時間を減らさざるを得ないパートが増え、「繁忙期の年末は、特に勤務シフトを組むのが大変。少しでも働く時間を増やす人が出てくれれば」と話す。

 一方、同店で働く秋山博子さん(43)は思案顔だ。配偶者控除は拡充されても、中小企業の従業員に社会保険料の支払い負担が生じる年収130万円の「壁」は残る。これを超えると、いったん手取りが減る。小学生から高校生まで3人の子供を抱える秋山さんは「手取りを維持するには150万円まで働く必要があると聞いた。教育にお金がかかるからもっと働きたいが、家事や子育てに忙しい」と漏らす。夫の勤務先の配偶者手当が、配偶者控除にならって「妻の年収が103万円以下」でないと支払われないこともあり、勤務時間を増やすのにためらいがある。

 大綱は「働きたい人が就業調整を意識しないで働くことのできる環境作りに寄与する」と明記した。ただ、大和総研金融調査部の是枝俊悟研究員は「パートのような働き方に対する優遇拡大だが、企業の手当のあり方なども変わらないと、就労の後押しにはつながらない」と指摘する。

 今回の見直しが、企業の手当見直しや子育て環境の整備などを誘発すれば、女性が能力を生かせる環境は改善に向かう。しかし、フルタイム勤務の女性を置き去りにしたことで、「女性の働き方に中立な税制改正」という当初の目的は変質。就労を巡る「壁」自体は残る。パート勤務を促すという点でも中途半端な結果に終われば、「1億総活躍」という安倍晋三政権の金看板は色あせる。

 ◇官邸主導、議論は空洞化

 自民党税制調査会が当初は配偶者控除の廃止を目指しながら、配偶者控除の対象者を拡大させるという逆方向となった背景には、首相官邸の意向があった。

 「所得税の久しぶりの大改正を考えている」。自民税調の宮沢洋一会長は8月末、報道各社の取材に対し、そうぶち上げた。しかし、抜本見直しの動きは、税調の議論が本格化しないまま失速する。税調幹部は「公明党への配慮が最大の理由だ」と明言する。

 配偶者控除の代わりに導入を考えていた「夫婦控除」は、中間層を含む幅広い増税をもたらしかねない。公明党は、来夏の都議選を控えて増税は避けたいところだった。首相官邸がこうした事情に配慮し、税調の議論が始まる前に、夫婦控除を容認しない意向を自民税調側に伝達したのだ。

 官邸の意向を受け、自民税調は早々と夫婦控除の導入を断念。逆に、配偶者控除を拡大することで、女性の就労を後押しするという体裁を整えた。現在の税制改正は、与党税調が徹底的に議論して決めるという段取りを踏むはずだが、6日に党本部で開かれた税調会合では、所得税に関する質問は2問だけ。3分程度の議論で了承した。

 自民税調は、15年度税制改正の法人税減税や、16年度改正の消費税の軽減税率の対象品目を巡る議論で官邸と対立。激しい議論を経た末、官邸に押し切られた。敗北感は根強く残り、「『官邸主導の決定にたてついても仕方ない』という空気が定着しつつある」(税調幹部)。今回の経緯は、税制改正の主導権を官邸が握る中、議論が空洞化していることを浮き彫りにした形だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161209-00000011-mai-bus_all

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