2017年度税制改正は、パート主婦世帯などの税負担を軽くする配偶者控除の対象拡大や、麦芽比率などで異なるビール類の酒税一本化など身近なテーマが盛り込まれた。主婦や子育て世帯は働きやすくなるが高所得の世帯は負担増になる場合があるなど、立場によって明暗が分かれることになりそうだ。
◆出勤日増やせる
「今までより、働く時間を増やせそう」
川崎市の病院で医療事務のパートをしている主婦(40)は笑顔を見せる。以前から上司に出勤日を増やせないか頼まれていたが、年収が103万円を超えると配偶者控除が受けられなくなるため、躊躇(ちゅうちょ)していた。
今回の改正では、夫が満額38万円の配偶者控除を受けられる妻の年収要件を103万円以下から150万円以下に引き上げた。201万円までは控除の一部が受けられる。
ただ、この主婦は小学校低学年の子供を抱えているため、「それほど多く働くつもりはない」ともいう。
政府の試算では、妻の年収が141万~150万円で高校生と大学生の子供2人の世帯の場合、所得税と個人住民税を足した減税額は夫の年収が500万円なら年5万2000円、1000万円で10万9000円になる。
一方、夫の年収が1220万円を超えると控除が全くなくなり、夫の年収が1500万円の専業主婦世帯では年15万8000円の増税になると試算されている。
働く意欲があっても保育所に子どもを預けられないという女性も少なくない。そこで企業主導型と呼ばれる認可外の保育所の土地や建物に毎年かかる固定資産税と都市計画税を半減し、保育所をつくりやすくする。「最近売れ筋の日本酒が安くなるのはうれしいが、増税の商品が多くて悩ましいね」。東京都内で酒販店を営む男性(67)は苦笑する。
ビール類ではビールの税額が減税になり、発泡酒や第3のビールは増税になる。
同じ醸造酒である日本酒は減税、ワインは増税して税額を統一する。チューハイは増税される。庶民いじめとの見方がある一方、消費者の嗜好(しこう)を変える可能性もある。
◆「大型車」も増税
自動車は、燃費の良い車に対する優遇措置の基準が厳しくなり、大きめの車に乗っている人は車検時に払う「自動車重量税」などが増税になる。トヨタ自動車の「アルファード」や日産自動車の「エクストレイル」の一部などは減税対象から外れる見込みだ。
住宅分野では、20階建て以上のタワーマンションにかかる固定資産税が高層階は増税、低層階は減税になり、40階建てなら最上階の固定資産税は1階より10%程度高くなる。適用されるタワマンは、18年以降に引き渡す新築物件からだ。
今回の改正では、賃上げや研究開発投資を行った企業を減税する一方、個人向けは減税項目がそれほど多くはなく、暮らしが楽になるとはいえなさそうだ。
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