インターネットの交流サイトや無料通信アプリを通じ、性的な被害に遭う子どもが後を絶たない。背景には、有害サイトなどへの接続を遮断するスマートフォンの「フィルタリング」機能が活用されていない実態がある。兵庫県警が今年1~6月に摘発した事件の被害者32人(12~17歳)に確認したところ、同機能を設定していたのは1人だけだった。県警は「保護者も含め啓発を強化したい」としている。(初鹿野俊)
県警によると、サイトなどで知り合った18歳未満に性的画像を送らせたり、淫行したりしたとして、1~6月に容疑者が逮捕、書類送検された事件の被害者は40人。このうちスマホを利用して被害に遭った32人の保護者に協力を得て聞き取り調査を実施した。
結果は、31人がフィルタリング機能を使っていなかった。残る1人も同機能が設定されていない知人のスマホを利用し被害に遭った。未設定の理由は「特にない」が21人で最も多く、「不適切な利用はないと子どもを信用している」が6人、「設定の効果が不明」が3人-の順だった。
被害で目立つのが、容疑者の求めで裸などの写真を自ら撮影し、送信するケース。23人がこれに該当した。友人募集のサイトで同世代になりすまし、思春期の悩み相談を装って言葉巧みに写真を送らせる手口もあった。その後「写真をばらまく」などと会うことを強要され、淫行(買春含む)された被害者も16人に上った。
18歳未満がスマホなどを利用する場合、携帯会社は、フィルタリングを提供するよう法律で義務づけられ、販売店による説明も県条例で定められている。しかし、県の調査によると、昨年度時点の利用率は約6割にとどまった。
県警は「子ども用のスマホを親名義で契約したため設定が見過ごされたり、子どもに頼まれて保護者が解除したりしているケースもある」と指摘。「被害の実態を知り、意識を高めてほしい」と呼び掛けている。
■「LINE使えぬ」誤解が一因/兵庫県立大の竹内和雄准教授(生徒指導論)の話
フィルタリングを設定していない子どもが犯罪に遭いやすいのは全国的な傾向。無料通信アプリのLINE(ライン)が使えなくなる-との誤解が広がっているのも一因だ。実際は設定していても使えるようになったが、知らない保護者は多い。小学生でも未利用のケースがあり、設定が当たり前になるよう社会で取り組む必要がある。
【携帯電話のフィルタリング機能】 性風俗や暴力、違法薬物などの犯罪性の強い内容を含むサイトへの接続を遮断するインターネット上のサービス。兵庫県条例では、18歳未満がスマホなどを購入する際は原則的に設定を義務付けている。フィルタリングアプリは販売店で設定してもらうか、自分で操作して設定もできる。各携帯電話会社の自社サービスのほか、接続できるサイトや時間帯を保護者の裁量で個別に設定できるものもある。
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